ゲノム情報とプロテオーム情報の統合によってもたらされる生命情報科学の新展開
ヒトゲノムDNAの全塩基配列解読計画が発表されたとき, 誰しもが無謀な計画だと思ったに違いない. それがなんと2001年の2月には, 国際コンソーシアムのグループ1)とセレラ・ジェノミックスのグループ2)によってそれぞれ独立に解読結果が報告され, 事実上の目標達成宣言が出されてしまった. 実際には多数のギャップで分断されたドラフト(概要配列)に過ぎず, 完全解読は2003年頃になるが, すでにいくつかのことが明らかになった. なかでも特筆すべきことは, これまで約10万と推定されていたヒトの遺伝子総数が3~4万に下方修正されたことである. 国際コンソーシアムグループが約31,778, セレラ・...
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Published in | 生物物理化学 Vol. 45; no. 2; pp. 139 - 142 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本電気泳動学会
2001
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ISSN | 0031-9082 |
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Summary: | ヒトゲノムDNAの全塩基配列解読計画が発表されたとき, 誰しもが無謀な計画だと思ったに違いない. それがなんと2001年の2月には, 国際コンソーシアムのグループ1)とセレラ・ジェノミックスのグループ2)によってそれぞれ独立に解読結果が報告され, 事実上の目標達成宣言が出されてしまった. 実際には多数のギャップで分断されたドラフト(概要配列)に過ぎず, 完全解読は2003年頃になるが, すでにいくつかのことが明らかになった. なかでも特筆すべきことは, これまで約10万と推定されていたヒトの遺伝子総数が3~4万に下方修正されたことである. 国際コンソーシアムグループが約31,778, セレラ・ジェノミックスグループが26,383~39,114という数字を出しており, 理化学研究所のグループも約36,500と推定していることから, これはほぼ確実であろう. ヒトがハエや線虫の遺伝子の2倍程度しか持たないというのは驚きであるが, この推定値にはオルターナティブスプライシングの数は含まないので, 蛋白質の総数は, やはり当初推定されていた10万にかなり近い値になるものとみられる. さらに, 予測された遺伝子のうち約60%が機能未知の新規遺伝子であったということも注目に値する. 今回みつかった新規遺伝子の機能解明におけるプロテオーム研究の果たすべき役割は大きい. |
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ISSN: | 0031-9082 |