筋層非浸潤性膀胱癌の全例に光力学診断ガイド下経尿道的手術は必要か?
抄録:治療の出発点である経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)では, その手術手技の質が膀胱癌の治療成績に直接反映されるといっても過言でなく, complete TURBTを常に心がけることが肝要である. 膀胱内再発は腫瘍の生物学的特徴に依存するが, 微小病変の見落とし, 不十分な切除範囲, 上皮内癌(CIS)などの視認しづらい平坦病変の存在などTURBTという手術そのものの不確実性が影響する. 経口5-アミノレブリン酸塩酸塩を用いた光力学診断(5-ALA-PDD)が, 上皮内癌を中心とした平坦病変検出率の向上, 治療選択の最適化を通じ, 治療成績を改善することがわかった. 一方で, 蛍光偽陽性...
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Published in | 西日本泌尿器科 Vol. 84; no. 5; pp. 449 - 453 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
西日本泌尿器科学会
01.06.2022
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ISSN | 0029-0726 |
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Summary: | 抄録:治療の出発点である経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)では, その手術手技の質が膀胱癌の治療成績に直接反映されるといっても過言でなく, complete TURBTを常に心がけることが肝要である. 膀胱内再発は腫瘍の生物学的特徴に依存するが, 微小病変の見落とし, 不十分な切除範囲, 上皮内癌(CIS)などの視認しづらい平坦病変の存在などTURBTという手術そのものの不確実性が影響する. 経口5-アミノレブリン酸塩酸塩を用いた光力学診断(5-ALA-PDD)が, 上皮内癌を中心とした平坦病変検出率の向上, 治療選択の最適化を通じ, 治療成績を改善することがわかった. 一方で, 蛍光偽陽性による過剰切除についての詳細な報告は少ない. 膀胱部位別偽陽性率の検討では, 多少の差はあるがすべての領域で炎症や接線効果による偽陽性所見が起こると報告されている. さらには, 5-ALA経口投与の有害事象として, 肝関連酵素上昇, 低血圧, 皮膚障害, 嘔吐などが挙げられる. 特に, 低血圧については低頻度ではあるものの集中治療室管理を要した報告もある. こういった負の側面を考慮すると, 筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)症例全例に対して使用することはそもそも得策ではないと考えられる. ベネフィットがリスクを上回る症例, リスクがベネフィットを上回る症例をいかに手術前に選別するかは臨床医に課せられた大きな課題であろう. |
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ISSN: | 0029-0726 |