小児泌尿器科疾患の移行医療

「抄録」: 小児医療の現場では, 患者が思春期から大人へと成長・成熟するにあたって, それまで保護者や医療者のもとで行われてきた保護的な医療から患者が自己決定権をもって行う自律的な成人医療へと移行(transition)していく必要が生じる. 小児泌尿器科の分野では近年ようやく, 小児期治療後患児や二分脊椎症など生涯にわたって医療的な管理を要する疾患の移行医療について言及されることが多くなってきている. よりよい移行を達成するためには, 患者の成人後を見込んで早い段階からの対応が必要であり, 各職種の参画による移行支援外来の設置が望ましい. 小児泌尿器科で扱う疾患は多岐にわたり, 成人移行にあ...

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Published in西日本泌尿器科 Vol. 85; no. 5; pp. 252 - 259
Main Authors 此元竜雄, 溝口瞳, 赤峰翔, 秋武奈穂子, 鯉川弥須宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 西日本泌尿器科学会 01.06.2023
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ISSN0029-0726

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Summary:「抄録」: 小児医療の現場では, 患者が思春期から大人へと成長・成熟するにあたって, それまで保護者や医療者のもとで行われてきた保護的な医療から患者が自己決定権をもって行う自律的な成人医療へと移行(transition)していく必要が生じる. 小児泌尿器科の分野では近年ようやく, 小児期治療後患児や二分脊椎症など生涯にわたって医療的な管理を要する疾患の移行医療について言及されることが多くなってきている. よりよい移行を達成するためには, 患者の成人後を見込んで早い段階からの対応が必要であり, 各職種の参画による移行支援外来の設置が望ましい. 小児泌尿器科で扱う疾患は多岐にわたり, 成人移行にあたっては, 小児科各科(腎臓内科医や内分泌代謝科医など)との連携を要する. 患者によっては泌尿器科で対応している病態に加えて, 知的・精神的発達の問題, 呼吸器・循環器的問題, 消化器外科的問題, 整形外科的問題などが絡み合い成人移行についても個々のケースごとに細やかな対応が必要となる. また, 現時点では, 患者を取り巻く社会的な制約も多く, 社会制度的な整備も望まれる. 移行医療の重要性は今後さらに増していくものと思われ, 患者が成人後も希望する医療を受けられるようにスムーズに移行するにはどうすればよいか, 現状認識と将来展望につき述べる.
ISSN:0029-0726