腹腔内停留精巣の治療法
抄録:腹腔内精巣は悪性化のリスクや健側精巣への組織学的影響回避のため通常の停留精巣と同様, 2歳頃までには処置が必要である. 精巣の異形成ないし強度の低形成, 精巣血管, 精管が非常に短い, または患児が思春期以降の場合は患側精巣の摘出も考慮される. 術前検査で内鼠経輪部の腹腔内精巣を同定した場合, 開放手術もしくは腹腔鏡による対応が可能である. 一方, 術前検査で精巣を認めない場合は腹腔鏡での確認, 手術を要する. 開放手術は通常の鼠径部アプローチまたはJones法を行う. 腹腔鏡下手術は精巣血管および精管を周囲腹膜より剥離して精巣を陰嚢内に誘導, 固定する. 精巣が内鼠経輪より2-3cm以...
Saved in:
Published in | 西日本泌尿器科 Vol. 84; no. 5; pp. 487 - 492 |
---|---|
Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
西日本泌尿器科学会
01.06.2022
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 0029-0726 |
Cover
Summary: | 抄録:腹腔内精巣は悪性化のリスクや健側精巣への組織学的影響回避のため通常の停留精巣と同様, 2歳頃までには処置が必要である. 精巣の異形成ないし強度の低形成, 精巣血管, 精管が非常に短い, または患児が思春期以降の場合は患側精巣の摘出も考慮される. 術前検査で内鼠経輪部の腹腔内精巣を同定した場合, 開放手術もしくは腹腔鏡による対応が可能である. 一方, 術前検査で精巣を認めない場合は腹腔鏡での確認, 手術を要する. 開放手術は通常の鼠径部アプローチまたはJones法を行う. 腹腔鏡下手術は精巣血管および精管を周囲腹膜より剥離して精巣を陰嚢内に誘導, 固定する. 精巣が内鼠経輪より2-3cm以上高位に存在する場合は精巣血管が短い場合が多く, それを切断して一期的あるいは二期的に固定術を行う(Fowler, Stephens, 1959:以下F-S法). 腹腔鏡下二期的F-S法の成功率は88.8%と良好である. 精巣血管の切断は精巣組織に影響を及ぼすとする報告も多い. F-S法での精巣固定術後の造精能, 妊孕性などについてはいまだ明確ではない. 精巣血管を温存する術式の工夫もみられるがF-S法同様に長期成績は明らかでない. この点は今後の報告を待たねばならない. 腹腔内精巣に対しては, 開放手術, 腹腔鏡下手術いずれにせよ確実な手術手技を習得し, 個々の症例に適切に対応できるようにしておくことが重要である. |
---|---|
ISSN: | 0029-0726 |