3. 注意すべき頸椎椎前軟部の炎症性疾患―石灰沈着性頸長筋腱炎
【はじめに】石灰沈着性頸長筋腱炎は整形外科医も知っておくべき疾患であり, 当院で経験した症例を提示し, 文献的考察を含めて報告する. 【症例】平成21年12月以降, 当院で石灰沈着性頸長筋腱炎及びその疑いとして治療した症例は5例である. 初診時主訴は全例で後頸部痛, 頸部運動制限, 嚥下時痛であった. XPでは全例で頸椎椎前軟部の腫脹陰影を認め, 血液検査にてさまざまな程度の炎症反応上昇を認めた. 5例中2例は初診時斜頸を呈していた. 1例はCRP:9.22, WBC:10440と強い炎症所見を認めMRIにて膿瘍貯留の疑いもあったため耳鼻科へ紹介. CTにて軸椎前方に石灰化所見あり, 石灰沈着...
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Published in | THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 61; no. 1; pp. 93 - 94 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
北関東医学会
01.02.2011
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ISSN | 1343-2826 |
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Summary: | 【はじめに】石灰沈着性頸長筋腱炎は整形外科医も知っておくべき疾患であり, 当院で経験した症例を提示し, 文献的考察を含めて報告する. 【症例】平成21年12月以降, 当院で石灰沈着性頸長筋腱炎及びその疑いとして治療した症例は5例である. 初診時主訴は全例で後頸部痛, 頸部運動制限, 嚥下時痛であった. XPでは全例で頸椎椎前軟部の腫脹陰影を認め, 血液検査にてさまざまな程度の炎症反応上昇を認めた. 5例中2例は初診時斜頸を呈していた. 1例はCRP:9.22, WBC:10440と強い炎症所見を認めMRIにて膿瘍貯留の疑いもあったため耳鼻科へ紹介. CTにて軸椎前方に石灰化所見あり, 石灰沈着性頸長筋腱炎の診断であった. 5例中2例で初診時にNSAIDと抗生剤の内服を処方したが, 他3例はNSAIDのみ処方. 全例で頸椎の安静指示もしくは外固定を行った. 1例のみ再診なく経過は不明であったが, 他の4例は速やかに疼痛が消失し, 画像もしくは採血にて改善を確認できた. 【考察】石灰沈着性頸長筋腱炎は誘因なく急性発生する頸部痛, 頸部運動制限, 嚥下時痛を三大症状とする疾患である. 血液生化学検査では炎症反応が上昇し, 画像上椎前軟部陰影の腫脹, 歯突起前方の石灰化を伴う特徴がある. 症状は速やかに改善する経過良好な炎症性疾患であるが, 鑑別すべき疾患として咽後膿瘍が重要である. 耳鼻科領域では稀な疾患とされているが, 急性の頸部痛患者の多くが整形外科を受診することを考えれば, 整形外科医師にこの疾患の認識が薄いため確定診断に至る症例が少ないだけで, 稀なものではないと思われる. 【結語】石灰沈着性頸長筋腱炎は急性の頸部痛を診察するにあたり常に念頭に入れておくべき疾患であり, 日常診療において椎前軟部腫脹陰影の読影と診察は慎重に行う必要がある. |
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ISSN: | 1343-2826 |