心筋リモデリングとNa+/グルコース共輸送体タンパク1 (SGLT1)

「1. はじめに」超高齢国家であるわが国では, 高齢者に多い疾患である心不全の患者が将来に渡り著明に増加することが予想されている. それゆえ, 本疾患の診断と治療法の確立は, 社会的要請となっている. 高血圧症のような慢性的心臓圧負荷や狭心症・心筋梗塞などの虚血性心疾患は, 心不全へ進展する可能性が高いため, その新しい治療法について研究を進めることは大変重要なことである. これまでの研究から不全心のような病的心筋では, 代謝リモデリングが引き起こされ, 脂肪酸のβ酸化とミトコンドリアでの酸化的リン酸化は抑制されてグルコースの心筋への取り込みが亢進していることが示されている. このことは, 心...

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Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 138; no. 7; pp. 939 - 943
Main Authors 弘瀬雅教a, 松下尚子b, 石田菜々絵a, 衣斐美歩a, 斎藤麻希a
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本薬学会 01.07.2018
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ISSN0031-6903

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Summary:「1. はじめに」超高齢国家であるわが国では, 高齢者に多い疾患である心不全の患者が将来に渡り著明に増加することが予想されている. それゆえ, 本疾患の診断と治療法の確立は, 社会的要請となっている. 高血圧症のような慢性的心臓圧負荷や狭心症・心筋梗塞などの虚血性心疾患は, 心不全へ進展する可能性が高いため, その新しい治療法について研究を進めることは大変重要なことである. これまでの研究から不全心のような病的心筋では, 代謝リモデリングが引き起こされ, 脂肪酸のβ酸化とミトコンドリアでの酸化的リン酸化は抑制されてグルコースの心筋への取り込みが亢進していることが示されている. このことは, 心疾患においては, 糖代謝リモデリング特に糖取り込みの亢進がなんらかの役割を担っていることが示唆させる. 糖輸送担体(glyco-transporter)は, 大きく促通拡散型糖輸送担体(glucose transporter;GLUT)とナトリウムイオン共輸送体のつくるNa+の電気化学的勾配によって供給されるエネルギーを利用して, グルコースの細胞内濃度を増加するNa+共役能動輸送性糖輸送担体(sodium glucose cotransporter;SGLT)に分類される.
ISSN:0031-6903