ラット第5腰髄神経根切断後の髄鞘内横断面積への後肢懸垂の影響
【はじめに】部分脱神経筋には残存神経からの側副発芽が生じるが, この発芽を生じた残存神経が運動負荷の有無によりどのように変化するのか一定した見解が得られていない. 今回, ラットの第5腰髄神経根を切断し部分脱神経を生じさせ, 後肢懸垂することによって無荷重としたときの脛骨神経の変化を明らかにすることを目的として研究を行った. 【対象】実験材料には12週齢のウィスター系雌ラット15匹を用いた. これらを第5腰髄神経根を切断した群(DEN)と第5腰髄神経根を切断したのち後肢懸垂した群(DEN+SUS)とに分けた. DEN群, DEN+SUS群はそれぞれ6匹, 9匹であった. 【方法】手術操作は腹臥...
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Published in | 理学療法学 Vol. 30; no. suppl-2; p. 57 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本理学療法士協会
01.04.2003
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ISSN | 0289-3770 |
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Summary: | 【はじめに】部分脱神経筋には残存神経からの側副発芽が生じるが, この発芽を生じた残存神経が運動負荷の有無によりどのように変化するのか一定した見解が得られていない. 今回, ラットの第5腰髄神経根を切断し部分脱神経を生じさせ, 後肢懸垂することによって無荷重としたときの脛骨神経の変化を明らかにすることを目的として研究を行った. 【対象】実験材料には12週齢のウィスター系雌ラット15匹を用いた. これらを第5腰髄神経根を切断した群(DEN)と第5腰髄神経根を切断したのち後肢懸垂した群(DEN+SUS)とに分けた. DEN群, DEN+SUS群はそれぞれ6匹, 9匹であった. 【方法】手術操作は腹臥位にて行った. 麻酔の後腰部より侵入し, 右第5腰椎横突起を露出し切除した. 第5腰髄神経根を同定し, ナイロン糸で結紮した後, 結紮部より末梢でこれを切断した. DEN群は通常の飼育を行い, DEN+SUS群は手術後ジャケットを装着させ, 後肢懸垂を行った. いずれも餌および水の摂取は自由とした. 両群ともに2週間後に右の脛骨神経を標本として採取した. 採取した神経は直ちに25%グルタールアルデヒド溶液中で固定し, さらに4%オスミウム酸溶液中で後固定した後, パラフィンで包埋した. 観察しやすくするため, さらにズダン黒B染色を施した. 神経組織は光学顕微鏡で観察し, コンピュータ上で髄鞘内横断面積を測定した. 【結果】両群ともに変性を起こした神経に混じって, 神経線維が残存していた. これらの神経の髄鞘内横断面積は, DEN群では16.5±12.1(平均値±標準偏差)μm2であり, DEN+SUS群では10.0±9.3μm2であった. またヒストグラムを作成すると, DEN+SUS群は左方へ偏位していた. 【考察】側副発芽によって筋が再支配を受けるとき, 1本の運動ニューロンとその支配筋線維群である運動単位は通常の4倍から7倍となる. しかし後肢を懸垂した場合, 運動負荷が著しく減少するため, 神経線維に対しても負荷が減少し, 残存神経の髄鞘内横断面積の減少あるいは分布の左方への偏位としてあらわれたと考えられる. また廃用性筋萎縮によって生じる, 軸索流によるタンパク質の移動の変化もこれに関与していると推察される. 今後は筋との相互作用あるいは経時的な変化についても検討していく必要がある. |
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ISSN: | 0289-3770 |