3. 肺腺癌におけるMDM2遺伝子多型と喫煙, EGFR遺伝子変異との関連についての検討
【背景と目的】MDM2遺伝子は, 癌抑制遺伝子p53の負の制御因子である. MDM2のイントロンに存在するプロモーターには遺伝子多型(SNP309, T>G)が存在し, T/Tに比べG/G typeの人ではMDM2が高発現しており, p53の機能が抑制状態にあると報告されている. MDM2のSNPと発癌の関連が以前より示唆されており, 肺癌では腺癌のリスクや喫煙による発癌感受性に関与しているという報告がある. 今回我々は, 非小細胞肺癌, 特に腺癌おけるMDM2遺伝子多型と喫煙, EGFR遺伝子との関連を明らかにするために本研究を行った. 【対象と方法】2003年6月から2008年5月に...
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Published in | THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 59; no. 2; p. 208 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
北関東医学会
01.05.2009
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ISSN | 1343-2826 |
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Summary: | 【背景と目的】MDM2遺伝子は, 癌抑制遺伝子p53の負の制御因子である. MDM2のイントロンに存在するプロモーターには遺伝子多型(SNP309, T>G)が存在し, T/Tに比べG/G typeの人ではMDM2が高発現しており, p53の機能が抑制状態にあると報告されている. MDM2のSNPと発癌の関連が以前より示唆されており, 肺癌では腺癌のリスクや喫煙による発癌感受性に関与しているという報告がある. 今回我々は, 非小細胞肺癌, 特に腺癌おけるMDM2遺伝子多型と喫煙, EGFR遺伝子との関連を明らかにするために本研究を行った. 【対象と方法】2003年6月から2008年5月に切除した原発性肺癌193例を対象とした. MDM2遺伝子多型は血清もしくは正常肺から抽出したDNAを用いてRFLP法で解析した. 腫瘍DNAのEGFR, K-RAS変異はSMAP法等を用いて検討した. 【結果】対象は男性116名, 女性77例, 平均年齢67歳で, 腺癌129例, 扁平上皮癌64例であった. MDM2遺伝子多型は, T/T type:37例, G/T type:97例, G/G type:59例であった. 組織型別ではSNPの頻度に差を認めなかった. しかし, EGFR 変異陰性の腺癌においてはT/Tに比べG/GまたはG/T typeを有意に(p=.041)高頻度に認め, さらに, 喫煙指数も有意(p=.003)に低いという結果を得た. EGFR変異陽性の腺癌や, 扁平上皮癌ではSNPと喫煙指数の間に関連を認めず, K-RASとSNP・喫煙指数との間にも関連性は認めなかった. 【考察】EGFR陰性の腺癌では, T/Tに比べG/GもしくはG/T typeが有意に多く, 喫煙指数も有意に低かったことから, EGFR陰性の腺癌においてはMDM2のSNPが喫煙による発癌感受性に関与している可能性が高いと考えた. |
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ISSN: | 1343-2826 |