2. 9歳時偶然の肝機能障害にて診断されたWilson病に成長ホルモン分泌不全性低身長症を合併した一女児例

今回我々は, 9歳時に偶然の肝機能障害から診断されたWilson病に成長ホルモン分泌不全性低身長症を合併した一女児例を経験したので報告する. Wilson病は, ATP7B遺伝子の異常により生じる疾患であり, 本症例の遺伝子解析では, ATP7B遺伝子変異(R778L)をheter-ozygoteに有していた. 確定診断後, 塩酸トリエンチン, 硫酸亜鉛, 低銅食にて加療した. 身長に関しては, 7歳時には-1.0SD付近であったが, 11歳時に-2.9SDとなったため, 低身長およびWilson病の状態評価の精査目的にて当科に入院した. 入院時身長130.1cm(-2.9SD), 体重21....

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Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 59; no. 2; p. 207
Main Authors 小和瀬貴律, 溝口史剛, 石毛崇, 荒川浩一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北関東医学会 01.05.2009
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ISSN1343-2826

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Summary:今回我々は, 9歳時に偶然の肝機能障害から診断されたWilson病に成長ホルモン分泌不全性低身長症を合併した一女児例を経験したので報告する. Wilson病は, ATP7B遺伝子の異常により生じる疾患であり, 本症例の遺伝子解析では, ATP7B遺伝子変異(R778L)をheter-ozygoteに有していた. 確定診断後, 塩酸トリエンチン, 硫酸亜鉛, 低銅食にて加療した. 身長に関しては, 7歳時には-1.0SD付近であったが, 11歳時に-2.9SDとなったため, 低身長およびWilson病の状態評価の精査目的にて当科に入院した. 入院時身長130.1cm(-2.9SD), 体重21.9kg(-2.5SD), Tanner stageはB1, PH1であった. 精査の結果, 肝障害はごく軽度で尿細管機能障害も認めず, 成長障害の原因とは考えにくいという評価であった. 一方, 骨年齢は6歳3ヶ月と遅延し, IGF-Iは119.7ng/ml, 2種類の成長ホルモン分泌負荷試験でGH頂値の低値を示した. 下垂体MRIでは明らかな構造異常を認めなかった. 成長ホルモン分泌不全性低身長症と診断し, 成長ホルモン投与を開始した. その後の身長増加は良好で, 成長ホルモン投与終了時(15歳5ヶ月時)の身長は153.2cm(-1.08SD)と著明に改善した. 検索し得た範囲では, Wilson病と成長ホルモン分泌不全性低身長症の合併例は非常に稀と考えられ, 成長ホルモン投与期間中のWilson病の悪化もなく報告に値する貴重な症例と考えられた.
ISSN:1343-2826