15. 二期的に切除した両側後腹膜高分化脂肪肉腫の1例
【症例】78歳, 男性. 身長160cm, 体重55kg【既往歴】平成10年胆石症の診断で開腹胆嚢摘出術【現病歴】2008年6月頃より, 両下肢の浮腫出現したため, 近医受診され, 超音波検査でIVC圧迫する肝下面の腫瘍を指摘され精査加療目的で当科に紹介となった. 腹部は蛙腹様に膨満していた. 【血液検査所見】軽度貧血, 軽度低蛋白血症, 腫瘍マーカー上昇なし【画像所見】腹部CTでは前医で指摘されたものと思われる最大径11cmのやや造影効果の認められる低濃度充実性腫瘤を右腎頭側に認め, さらに左腹腔内の大半を占める隔壁の一部に造影効果認めるも全体的には造影されない脂肪組織と同様のDensity...
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| Published in | THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 59; no. 2; p. 198 |
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| Main Authors | , , , , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
北関東医学会
01.05.2009
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| ISSN | 1343-2826 |
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| Summary: | 【症例】78歳, 男性. 身長160cm, 体重55kg【既往歴】平成10年胆石症の診断で開腹胆嚢摘出術【現病歴】2008年6月頃より, 両下肢の浮腫出現したため, 近医受診され, 超音波検査でIVC圧迫する肝下面の腫瘍を指摘され精査加療目的で当科に紹介となった. 腹部は蛙腹様に膨満していた. 【血液検査所見】軽度貧血, 軽度低蛋白血症, 腫瘍マーカー上昇なし【画像所見】腹部CTでは前医で指摘されたものと思われる最大径11cmのやや造影効果の認められる低濃度充実性腫瘤を右腎頭側に認め, さらに左腹腔内の大半を占める隔壁の一部に造影効果認めるも全体的には造影されない脂肪組織と同様のDensityである低吸収性の最大径37cmの巨大な嚢胞様の腫瘤を認め, 横隔膜を上方に, 全結腸を右側に圧排偏位させていた. MRIでは左横隔膜下から骨盤までのCT同様の巨大な嚢胞性腫瘤を認め, 冠状断像で腫瘤内の左尾側に約5cmの充実性部分を認め悪性腫瘍の所見を呈していた. 右腎頭側の腫瘤はCT同様充実性であった. 拡散強調画像ではともに高信号病変としては描写されなかった. 血管造影では腫瘤は無血管野として描写され, 栄養血管など明らかでなかった. 【手術】両側の後腹膜腫瘍で, 左側は巨大であり画像診断で悪性腫瘍を疑われたため, 手術の方針となった. 手術は二期的に施行した. まず初回は左側の巨大腫瘤切除を行い, 体位変換にて縦隔, IVCへ腫瘍重量がかかるのを防止し, 循環動態に注意しながら施行した. その約1ヶ月後に右側腫瘤の手術を行った. 右腎の頭側に充実性腫瘤は存在し右副腎が騎乗するよう付着しており合併切除した. またIVCに強固に癒着していたため, 剥離は困難で損傷を恐れ, 被膜の一部を残存する形で摘出行った. 【病理所見】摘出標本は左4780g, 大きさ37×23cm, 右291g, 11×8cmで, 割面の肉眼所見は, 左は薄い線維性の被膜に被われ分葉状, 黄色調の柔らかい脂肪腫様の腫瘤で, 右は白色充実性で硬い腫瘍であった. 病理組織学的にはともに高分化型脂肪肉腫であり, 左は腫瘍細胞周囲の間質に疎な繊維成分や粘液を多く含み, 腫瘍内には毛細血管が目立った. 右は左に比べ, 細胞密度がやや増しており, 腫瘍細胞周囲の間質には線維化が認められた. また, 細胞分裂像も左に比べ若干多く観察された. 【術後補助療法】IVCに癒着した被膜の残存部は放射線治療(Σ50Gy)を行い, 術後明らかな残存部の増大, 再発は認めていない. 【結語】両側後腹膜高分化脂肪肉腫の報告は珍しく, かつ二期的に両側とも切除できたため, 文献的考察も含めて報告する. |
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| ISSN: | 1343-2826 |