移動形態の変更が日中の活動量の変化に及ぼす影響について

【はじめに】 脳卒中片麻痺患者における身体機能及び日常生活動作能力の維持・向上のためには、日々の生活における身体活動量が重要であると報告されている。しかし、脳卒中患者の中には、病識が乏しく、運動意欲も低下している症例も多く、十分な活動量を確保することが難しいことがある。そのため、日常生活場面での活動量を確保する手段の1つとして日常生活の移動形態を車椅子から歩行へ変更することがある。しかし、転倒リスクの伴う移動形態へ変更することで、活動量が必ずしも増加するとは言い切れない。そこで、移動形態の変更が、活動量の増加に寄与するのか検証したため報告する。【対象と方法】 対象は下肢のBrunnstrom...

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Published inKyushu physical therapist Congress Vol. 2023; p. 168
Main Authors 今泉 夏歩, 田代 耕一, 古川 慶彦, 堀内 厚希
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会 2023
Kyushu Physical Therapy Association
Subjects
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ISSN2434-3889
DOI10.32298/kyushupt.2023.0_168

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Summary:【はじめに】 脳卒中片麻痺患者における身体機能及び日常生活動作能力の維持・向上のためには、日々の生活における身体活動量が重要であると報告されている。しかし、脳卒中患者の中には、病識が乏しく、運動意欲も低下している症例も多く、十分な活動量を確保することが難しいことがある。そのため、日常生活場面での活動量を確保する手段の1つとして日常生活の移動形態を車椅子から歩行へ変更することがある。しかし、転倒リスクの伴う移動形態へ変更することで、活動量が必ずしも増加するとは言い切れない。そこで、移動形態の変更が、活動量の増加に寄与するのか検証したため報告する。【対象と方法】 対象は下肢のBrunnstrom Recovery Stage(以下、BRS)Ⅴである左片麻痺を呈している70歳代の女性とした。入院時(X年Y月Z日)より麻痺側下肢のすり足が著明であり、10m程度歩行すると躓きがみられていたため、病棟内移動を車椅子全介助で行うこととした。すり足が軽減し、独歩での移動を行えるようになったためZ日+28日に日中のみ病棟内の移動を独歩軽介助にて行うこととした。車椅子期間のZ+22~27日の6日間と、独歩軽介助期間のZ日+29日~34日の6日間において、日中のみ活動量計を装着し、1日の活動量を計測し比較した。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には十分に説明を行い、了承を得た。【結果】 総消費カロリーの平均は車椅子期間1,406.5±32.8kcal、独歩期間1,464.6±66.9 kcalと独歩期間が上回った。歩数の平均は車椅子期間が1,249.3±503.1歩、独歩期間が1,520.6±421.3歩と独歩期間が上回った。METs数による1日の運動時間の平均は、1.0~1.9METsは車いす期間が342.5±62.3分、独歩期間が396±84.7分、2.0~2.9METsが車いす期間は35.5±8.5分、独歩期間は55.5±7.7分、3.0~3.9METsは車いす期間が8.3±4.2分、独歩期間が8.8±3.9分、4.0~4.9METsは車いす期間が4.7±0.7分、独歩期間が3.7±2.1分、5.0~5.9METsは車いす期間が2.2±0.69分、独歩期間が2.2±1.1分、6.0~6.9METsは車いす期間が1.2±0.4分、独歩期間が1.2±0.9分、7.0~7.9METsは車いす期間が0.8±0.9分、独歩期間が0.5±0.5分、8.0METs以上は車いす期間が0.2±0.4分、独歩期間が0.5±0.5分であった。【考察】 1.0~1.9METsは約53分、2.0~2.9METsは約30分上回った。これは、症例が比較的頻尿であり、トイレまでの移動回数も多かった。そのため、トイレまでの移動毎に歩行を行えたことにより、活動量が多くなったのではないかと考える。また、本人より、独歩軽介助になったことで他患者との交流が増えたと聴取した。廊下ですれ違った他患者と立ち話をする時間が増えたことにより、活動量が多くなったのではないかと考える。さらに、交流の中で他患者とテレビ番組の情報共有を行っていると聴取されており、椅子に座ってテレビを観るなど、座位で過ごされることが増えたため、活動量が多くなったと考える。 移動形態の変更により活動量の増加を図る場合は、症例の活動意欲等も影響するため、今後も継続して検証を行っていく。
ISSN:2434-3889
DOI:10.32298/kyushupt.2023.0_168