下肢切断者の動向について

【はじめに】 当院は医療センターとして、切断者に対し急性期から回復期へと一貫としたリハビリテーション(以下リハ)が可能である。義足歩行獲得率は、義足装着のために入院適応となった症例を対象としていることも少なくない。そこで、当院の機能を用いて全切断者を対象に調査を行った。下肢切断者の動向を捉え、義足歩行獲得率及び自宅退院率について報告する。 【方法】 対象は平成19年4月から平成22年3月までの3年間で、初回及びリハ目的で入院した切断者(major amputation)29名31肢を対象とした。平均年齢は61.6±13.2歳(22-81歳)、性別は男性18名,女性11名で片側罹患が27名,両側...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 29; p. 48
Main Authors 中島 弘, 西山 徹, 立元 寿幸, 石井 智美, 大関 直也, 宮川 研, 神林 拓朗, 吉田 真美, 石橋 和比古
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2010
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.29.0.48.0

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Summary:【はじめに】 当院は医療センターとして、切断者に対し急性期から回復期へと一貫としたリハビリテーション(以下リハ)が可能である。義足歩行獲得率は、義足装着のために入院適応となった症例を対象としていることも少なくない。そこで、当院の機能を用いて全切断者を対象に調査を行った。下肢切断者の動向を捉え、義足歩行獲得率及び自宅退院率について報告する。 【方法】 対象は平成19年4月から平成22年3月までの3年間で、初回及びリハ目的で入院した切断者(major amputation)29名31肢を対象とした。平均年齢は61.6±13.2歳(22-81歳)、性別は男性18名,女性11名で片側罹患が27名,両側罹患が2名であった。診療録より後方視的に、切断原因,切断高位,義足作製率,義足歩行獲得率,自宅退院率について調査した。尚、義足歩行の獲得はリハ終了時の歩行能力をもとに判断し、介助なしでの歩行を獲得と定義した。 【結果】 切断原因は糖尿病性切断が14名(48%),血管原性切断が8名(28%),閉塞性動脈硬化症が1名(3%),バージャー病が1名(3%),外傷性切断が3名(10%),その他が2名(7%)であった。切断高位は、大腿切断が11名(38%),下腿切断が16名(55%),大腿切断と下腿切断の両側罹患(以下両側罹患)が2名(7%)であった。大腿切断:義足作製率;6/11名(55%),義足歩行獲得率;4/11名(36%),義足作製に対する義足歩行獲得率;4/6名(67%),自宅退院率;8/11名(73%) 下腿切断:義足作製率;15/16名(94%),義足歩行獲得率;14/16名(88%),義足作製に対する義足歩行獲得率;14/15名(93%),自宅退院率;16/16名(100%) 両側罹患:義足作製率,義足歩行獲得率,自宅退院率;全て0/2名(0%) 義足作製、義足歩行獲得に至らなかった者は、大腿切断及び両側罹患では、Steinbergの義足歩行阻害因子を有する,下腿切断では義足及びリハに対し理解力が低下している,傾向があった。 【考察】 当院での切断原因は、血管原性切断によるものが約80%と近年の傾向を反映した結果となった。切断高位は大腿切断と下腿切断との間に有意差は認められなかった。(X2=0.93,df=1,p>0.05)下腿切断では高率で義足歩行が獲得できるが、大腿切断では他の報告と同程度の獲得率に留まった。当院では大腿切断に対し、基本的にSteinbergの義足歩行阻害因子を有する者には義足を作製せず、他の移動手段を考慮したリハを行っている。また、義足を作製した場合でも膝継手の使用方法に難渋する,義足装着下でのバランス能力低下,などが原因で実用歩行が獲得できず、義足歩行獲得率を低下させていると考えられた。自宅退院率では、切断者は他の疾患と比較すると高率で自宅退院が可能である。義足を作製しない場合でも、移動手段に考慮したリハを実践することが重要である。
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.29.0.48.0