FIM項目でみた脳血管疾患の改善度の特徴

【目的】 当院回復期リハビリテーション病棟は、開設以来在宅復帰を目標にリハビリテーションに取り組んでいる。しかし実際には在宅復帰できなかった者も少なくないうえ、脳血管疾患と運動器疾患の在宅復帰率にも大きく差が生じている。そこで今回は在宅へと退院された患者におけるADLの変化をFunctional Independence Measure(FIM)を用いて、脳血管疾患・運動器疾患を比較検討し、脳血管疾患のADL改善の特徴を見出し、在宅復帰率向上について考える。 【対象と方法】 対象は平成18年4月から平成19年3月までに在宅に退院した患者66名とし、脳血管疾患(31名)と運動器疾患(35名)に分...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2007; p. 118
Main Authors 嶺井 大輔, 與儀 清介, 新里 剛史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2007
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2007.0.118.0

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Summary:【目的】 当院回復期リハビリテーション病棟は、開設以来在宅復帰を目標にリハビリテーションに取り組んでいる。しかし実際には在宅復帰できなかった者も少なくないうえ、脳血管疾患と運動器疾患の在宅復帰率にも大きく差が生じている。そこで今回は在宅へと退院された患者におけるADLの変化をFunctional Independence Measure(FIM)を用いて、脳血管疾患・運動器疾患を比較検討し、脳血管疾患のADL改善の特徴を見出し、在宅復帰率向上について考える。 【対象と方法】 対象は平成18年4月から平成19年3月までに在宅に退院した患者66名とし、脳血管疾患(31名)と運動器疾患(35名)に分類した。 それぞれの入院時および退院時のADLをFIMで評価し、総得点の利得(入院時と退院時の差)と各項目の利得(入院時と退院時の差)を算出しそれぞれ比較検討を行った。統計にはt検定を使用し、有意水準はそれぞれ5%とした。 【結果】 脳血管疾患では、利得21.1±3.1点、運動器疾患では利得10.9点±2.2点と改善しており、優位差も見られた。 FIM項目においての改善は、運動項目では「更衣(上半身)」、「食事」、「清拭」、認知項目では「理解」、「表出」、「記憶」、「問題解決」、「社会的交流」の全項目に有意差がみられ、それぞれ脳血管疾患の改善の数値が大きい結果となった。 それ以外のFIM項目の改善度については有意差がみられなかった。 【考察】 今回の結果から中枢神経機能、高次脳機能、上肢機能が大きく影響すると思われる項目の点数が低得点から高得点へと変わることで、これらの項目に優位差が生じたと考えられる。  よって脳血管疾患においては、運動機能を高める一方で、早期からチームアプローチによりこれらの機能にも積極的に関与することで、脳血管疾患においての在宅復帰率の向上が期待できる。 また現在、回復期病棟においての入院期限は運動器疾患90日、脳血管疾患150日から180日という差はあるものの、それぞれの「移動」や「移乗」といった運動項目の改善度には有意差は生じていない。しかし今回の結果においては、入院期限の差によるところも少なからず影響していると推測される。 【まとめ】 FIMの認知項目、運動項目における排泄コントロールといった面にも重点をおき、患者を総合的に捉え、チーム全体でアプローチすることで自宅復帰へとつなげていきたい。 また今回は、在宅復帰群のみに着目したが、今後は非在宅復帰群や運動器疾患における特徴にも着目して考えていきたい。
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2007.0.118.0