周術期呼吸リハビリテーションにおけるアドヒアランスの重要性
【緒言】 周術期呼吸リハビリテーション(以下、呼吸リハ)の目的は、術前に手術可能な肺機能の獲得、術後は肺合併症を予防し、患者のADL・QOLを良好に保ち早期離床・早期退院を目指す事にある。術前から介入することで排痰能力や運動耐用能を高められ、術後の離床訓練やADL指導が支障少なく遂行できる。しかし上記の治療を円滑に実施するには患者自身の高いアドヒアランスが必要不可欠だが、臨床においてこれが不足した患者は少なくない。今回、低肺機能に加えアドヒアランスが不足したものの周術期を経て行動変容が見られた症例を経験したので報告する。 【症例紹介】 70歳代女性。平成19年12月中旬、stage_I_・...
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Published in | Nihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 57; p. 101 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
2008
一般社団法人 日本農村医学会 |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1880-1749 1880-1730 |
DOI | 10.14879/nnigss.57.0.101.0 |
Cover
Summary: | 【緒言】
周術期呼吸リハビリテーション(以下、呼吸リハ)の目的は、術前に手術可能な肺機能の獲得、術後は肺合併症を予防し、患者のADL・QOLを良好に保ち早期離床・早期退院を目指す事にある。術前から介入することで排痰能力や運動耐用能を高められ、術後の離床訓練やADL指導が支障少なく遂行できる。しかし上記の治療を円滑に実施するには患者自身の高いアドヒアランスが必要不可欠だが、臨床においてこれが不足した患者は少なくない。今回、低肺機能に加えアドヒアランスが不足したものの周術期を経て行動変容が見られた症例を経験したので報告する。
【症例紹介】
70歳代女性。平成19年12月中旬、stage_I_・A期の右扁平上皮癌と診断され呼吸リハ開始。喫煙歴は20本/day×20年以上だが現在禁煙しており、肺気腫・慢性気管支炎を合併。FEV1.0:0.96L、%FEV1.0
:52.2%、FEV1.0%:50.5%、VC:1.96L、%VC:86.7%、FVC:1.90L、%FVC:84.1%、PEF:1.46L/s。安静時SpO2:95%、運動後90%。安静時呼吸数22回/分、運動後26回/分だがADL上息切れの訴えなく、6MWTでは450m歩行可能。
【治療経過】
<検査入院時>術後肺合併症防止の為、自己喀痰目的にFEV1.0
:1.20L、PEF:2.70L/s以上を目標に深呼吸、腹筋群強化、ACBTを施行した結果、開始後10日でFEV1,0:1,28L、PEF:2.43L/sと手術可能な肺機能に改善。
<外来移行後>在宅での自己管理と訓練に対する理解不足のため、自主トレーニングが滞りH20年1月中旬急性肺炎発症しFEV1.0:0.80L
、PEF:1.54 L/sに減少、呼吸リハ中止。1月下旬より再開したが肺機能改善せず、主治医から本人・家族へ人工呼吸器・HOT導入を考慮した手術か、投薬・化学療法で対処するかの選択を説明された結果、手術を選択。
<術前>ThresholdPEPによる自主トレーニング追加。体調管理の手洗い・うがいを5回/日以上と回数を明確化し指導した結果、FEV 1.0 :1.30L、PEF:2.64 L/sまで改善。
<術後>H20年3月上旬手術施行されるも肺婁合併。離床・深呼吸・排痰指導続行し術後21日目にドレーン抜管。運動能力回復・自宅復帰に向け、歩行訓練、ADL指導継続。
【考察】
今回の治療経験を通し、アドヒアランスの有無が手術施行可能か否かを決定する一つの要素となり、その後の生活にも影響を与える事を認識した。自己管理能力向上には疾患に対する理解・訓練・指導協力を得られる教育的介入は重要である。
本症例はセルフケア不足の為、肺機能が低下し手術困難と宣告された。しかし医療スタッフの継続した指導の下、患者自身の自己管理能力が向上しFEV1.0がこれまでの最高値まで改善した事や、腫瘍の目立った拡大もなかったため最小限のリスクで手術可能となり、術後もO2使用する事なく自宅復帰を目指し訓練を続行している。さらに手術が成功した事で目標達成という自己効力感が得られ、術前からスタッフと良好な信頼関係の構築もあり術後はタイムリーな介入が可能となった。
今後は早期からのアドヒアランス獲得を目指す事や退院後も再入院のない生活指導を視野に入れ、肺合併症・栄養状態・パニックコントロールなど多職種間での包括的アプローチを実施し、患者のADL・QOL維持・向上に繋げていきたいと考える。 |
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ISSN: | 1880-1749 1880-1730 |
DOI: | 10.14879/nnigss.57.0.101.0 |