人工膝関節全置換術後の理学療法開始時期の違いによる機能回復の検討

【目的】クリティカルパス(CP)は導入後もより質の高い医療を提供するために見直し・再検討が行われている。当院における人工膝関節全置換術(TKA)では、2004年11月より、術後4週での退院に向けたCPを使用し、術後2日目より持続的他動運動(CPM)を開始し、5日目から理学療法・歩行練習を開始していた。しかし、2008年11月よりCPが変更となり術後2日目からCPM・理学療法開始し、3日目より歩行練習を開始することとなった。今回、CP変更後の症例と変更前の症例について、身体機能、疼痛、T-cane歩行獲得時期、階段昇降獲得時期、歩行能力について比較し、CP変更の効果について検討したので報告する。...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2010; p. 311
Main Authors 北里 直子, 河野 一郎, 時枝 美貴, 藤吉 大輔, 岡 瑠美, 宮里 幸, 高杉 紳一郎, 岩本 幸英
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2010
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2010.0.311.0

Cover

More Information
Summary:【目的】クリティカルパス(CP)は導入後もより質の高い医療を提供するために見直し・再検討が行われている。当院における人工膝関節全置換術(TKA)では、2004年11月より、術後4週での退院に向けたCPを使用し、術後2日目より持続的他動運動(CPM)を開始し、5日目から理学療法・歩行練習を開始していた。しかし、2008年11月よりCPが変更となり術後2日目からCPM・理学療法開始し、3日目より歩行練習を開始することとなった。今回、CP変更後の症例と変更前の症例について、身体機能、疼痛、T-cane歩行獲得時期、階段昇降獲得時期、歩行能力について比較し、CP変更の効果について検討したので報告する。【方法】対象は2007年10月から2008年10月までにTKAを施行した患者のうち、術前から退院時にかけて定期評価が可能であった症例61名(男性5名、女性56名、平均年齢72.9歳)(以下5D群)と、2008年11月から2009年11月までにTKAを施行した患者のうち、術前から退院時にかけて定期評価が可能であった症例41名(男性3名、女性38名、平均年齢74.5歳)(以下2D群)であった。また、本研究の対象者には十分な説明を行い、同意を得た。 評価項目は、術前と術後1週ごとの膝関節屈曲・伸展の筋力とROM、安静時痛の評価としてVisual analog scale(VAS)、術後のT-cane歩行獲得日数と階段昇降獲得日数、術前と退院時の10m最大努力歩行時間とTimed Up & Go Test(TUG)、および入院期間であった。筋力はCOMBIT(ミナト医科社製)で、座位での膝関節屈曲60度で等尺性運動を測定した。また、統計には対応のないt 検定を用い、有意水準は5%未満とした。なお、本研究は、当院の倫理委員会の承認を受けて実施した。【結果】2D群と5D群において、T-cane歩行獲得日数は9.6日と11.3日(p<0.05)、階段昇降獲得日数は13.4日と15.7日(p<0.05)とどちらも2D群の方が有意に短縮していた。入院期間においても24.4日と27.9日(p<0.05)と2D群の方が短縮していた。また、TUGは2D群は術前15.8秒から退院時15.1秒、5D群は15.6秒から15.2秒と改善はしたが両群間で有意差はなかった。膝関節屈曲・伸展の筋力、ROM、VAS、10m最大努力歩行時間は両群間に有意差は認められなかった。【考察】今回の結果により、2D群が5D群に比べ、T-cane歩行獲得日数、階段昇降獲得日数において有意に改善が認められ、また、2D群の方が入院期間が短くなったが退院時における膝関節屈曲・伸展の筋力とROM、VAS、10m最大努力歩行時間、TUGには有意な差は認められなかった。術後早期からの理学療法開始によって、術後早期や退院時の疼痛の増強はなく、術後安静による廃用症候群を予防し、早期歩行獲得、入院期間の短縮に有効であることが示唆された。
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2010.0.311.0