マウスリンパ球芽球化反応におよぼす三酸化ヒ素の影響 とくにDNA, RNAおよび蛋白質合成への影響について

• Published in: 歯科基礎医学会雑誌 Vol. 26; no. 3; pp. 714 - 724
• Main Authors: 堤, 璋二, 猪狩, 行男, 川野, 寿彦, 矢崎, 欽也, 川野, 孝子, 石井, 裕一, 町田, 寛, 川口, 充, 下津浦, 末博
• Format: Journal Article
• Language: English; Japanese
• Published: 歯科基礎医学会 20.09.1984
• ISSN: 0385-0137
• DOI: 10.2330/joralbiosci1965.26.714

本論文はマウス脾臓由来リンパ球において, phytohemagglutininまたはconcanavalin Aによって促進される芽球化反応 (幼若化反応) を利用して, As2O3の3H-thymidine, 3H-uridineおよび3H-leucineのリンパ球取り込みへの影響を観察することにより, ヒ素化合物の蛋白質合成過程におよぼす影響をin vitoおよびin viroの実験で調べたものである。 in vitvoの実験では, As2O3の少量でも3H-thymidineの取り込みの減少がもっとも強く出現することから, As2O3はDNA合成に強く障害を与えることが示唆された。in viroの実験では, As2O3は3H-thymidineの取り込みを著明に減少させるが, 3H-leucineの取り込みは軽度に減少させ, 3H-uridineの取り込みには影響しないか, またむしろ促進させることなどから, As2O3はRNAや蛋白質合成にはほとんど影響を与えないでDNA合成に強い障害を与えることが明かとなった. 以上からヒ素はマウス脾臓由来リンパ球の芽球化反応に対して明かな障害を与えるものの, とくにDNA合成過程に対する抑制が主要であることが証明された。