遺伝性ビタミンC合成不能ラット (ODSラット) に見られる一部病変の老年者疾患との類似性

ODSラットは, 先天的にビタミンC合成が不能のため, ビタミンC欠乏の病態を検討するのに適当な実験動物であると考えられる. 老年者ではビタミンCが不足しているとされるため, この動物における急性および慢性のビタミンC欠乏の各病態において, 老年期に発症する疾患に類似した病態が観察できるか否かを検討した. 実験1: 生後63日齢で壊血病症状を呈したODSラットのホモ接合体8匹の各臓器重量を年齢を一致させた同一ストレインの正常個体10匹と比較した. 体重は対照ラットの136±16.2gに対して65.1±6.0g (p<0.001) と減少しており, 胸腺, 心, 肝, 脾, 大腿骨が著明な...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 25; no. 5; pp. 508 - 514
Main Authors 早川, 道彦, 浅井, 幹一, 河野, 和彦, 葛谷, 文男, 原田, 敬志
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 30.09.1988
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.25.508

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Summary:ODSラットは, 先天的にビタミンC合成が不能のため, ビタミンC欠乏の病態を検討するのに適当な実験動物であると考えられる. 老年者ではビタミンCが不足しているとされるため, この動物における急性および慢性のビタミンC欠乏の各病態において, 老年期に発症する疾患に類似した病態が観察できるか否かを検討した. 実験1: 生後63日齢で壊血病症状を呈したODSラットのホモ接合体8匹の各臓器重量を年齢を一致させた同一ストレインの正常個体10匹と比較した. 体重は対照ラットの136±16.2gに対して65.1±6.0g (p<0.001) と減少しており, 胸腺, 心, 肝, 脾, 大腿骨が著明な減少(p<0.001) を示した. 実験2: 対照ラット7匹が体重を400g程度を維持する飼育環境において, ホモ接合体8匹の平均体重が200g前後を推移するようにビタミンCを経口投与して延命させ, 生後約300日齢の慢性ビタミンC欠乏状態を作成し, 各臓器の病理組織を検討した. その結果, 骨粗鬆症様変化, 汎小葉性肺気腫様病変, 角膜混濁, 免疫担当臓器の萎縮とT細胞, B細胞の消失を疑わせる所見が観察され, 老年期の疾患や老人の変化に類似する所見を得た.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.25.508