門脈, 上腸間膜動脈合併切除により局所再発なく5年生存の得られた高度進行膵癌の1症例

進行膵癌の予後は極めて悪く, 特に上腸間膜動脈に浸潤をきたした膵癌では根治手術は望めないとの考えが一般的である. 著者らは黄疸を主訴とする59歳の女性で, CEAとCA19-9がともに異常高値を示し, 上腸間膜動脈と門脈を腫瘍内に巻き込んだ腫瘤径5cm の高度進行膵癌 (Stage IVa) に対して, 両血管を合併切除再建する拡大膵頭十二指腸切除術を行った. 血管は, 門脈4cm, 上腸間膜動脈3cmをおのおの合併切除して端々吻合した. 消化管の再建は今永法で行った. 出血量は1,785mlであった. 術後経過は良好で, 下痢などの機能障害も軽度で, 術後40日目に退院できた. 術後2つの腫...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 36; no. 9; pp. 1299 - 1304
Main Authors 仲村, 匡也, 池田, 文広, 星野, 和男, 鴨下, 憲和, 森下, 靖雄, 柳澤, 昭夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.09.2003
一般社団法人日本消化器外科学会
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery
Subjects
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.36.1299

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Summary:進行膵癌の予後は極めて悪く, 特に上腸間膜動脈に浸潤をきたした膵癌では根治手術は望めないとの考えが一般的である. 著者らは黄疸を主訴とする59歳の女性で, CEAとCA19-9がともに異常高値を示し, 上腸間膜動脈と門脈を腫瘍内に巻き込んだ腫瘤径5cm の高度進行膵癌 (Stage IVa) に対して, 両血管を合併切除再建する拡大膵頭十二指腸切除術を行った. 血管は, 門脈4cm, 上腸間膜動脈3cmをおのおの合併切除して端々吻合した. 消化管の再建は今永法で行った. 出血量は1,785mlであった. 術後経過は良好で, 下痢などの機能障害も軽度で, 術後40日目に退院できた. 術後2つの腫瘍マーカーの著明な低下が得られ, 術後4か月で術前と全く同様の社会復帰を果たし, 術後4年健存して術後5年4か月目に肺縦隔転移で癌死した. 解剖では温存膵や膵空腸吻合部を含めた膵周囲や後腹膜などの腹腔内には全く再発を認めず, 局所的には根治が得られていた極めてまれな症例を経験した.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.36.1299