小腸迷入膵が原因と考えられた老年者消化管出血の1例

老年者の消化管出血は日常診療でしばしば遭遇する. しかし, 老年者では無症状のことが少なくなく, 見逃される可能性があり注意が必要である. 我々は71歳女性で消化管出血による高度の貧血をきたした症例を経験した. 患者の出血源は上部消化管造影, 小腸造影, 注腸造影および内視鏡検査では発見できず, 腹部血管造影で初めて出血源と思われる小腸腫瘍を同定し得た. 小腸切除術の結果, 腫瘍は径4×3×3.5cm大の管外性に発育した迷入膵と診断した. 消化管出血の原因として小腸からの出血が疑われる場合, 小腸造影では診断因難な壁外発育性の腫瘍や血管性病変を考慮し, 一度は腹部血管造影を試みるべきであると思...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 35; no. 1; pp. 53 - 56
Main Authors 佐伯, 秀幸, 大蔵, 隆文, 児玉, 光司, 伊賀瀬, 道也, 井上, 勝次, 北見, 裕, 日和田, 邦男, 福岡, 富和, 間口, 元文, 小原, 克彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.01.1998
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.35.53

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Summary:老年者の消化管出血は日常診療でしばしば遭遇する. しかし, 老年者では無症状のことが少なくなく, 見逃される可能性があり注意が必要である. 我々は71歳女性で消化管出血による高度の貧血をきたした症例を経験した. 患者の出血源は上部消化管造影, 小腸造影, 注腸造影および内視鏡検査では発見できず, 腹部血管造影で初めて出血源と思われる小腸腫瘍を同定し得た. 小腸切除術の結果, 腫瘍は径4×3×3.5cm大の管外性に発育した迷入膵と診断した. 消化管出血の原因として小腸からの出血が疑われる場合, 小腸造影では診断因難な壁外発育性の腫瘍や血管性病変を考慮し, 一度は腹部血管造影を試みるべきであると思われた. 小腸腫瘍からの出血は消化管出血のなかでも比較的まれであり, 特に本症例のように出血源と考えられ外科的切除にいたった小腸腫瘍が病理組織学的に迷入膵と診断されることは非常にまれである.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.35.53