重複総胆管および膵・胆管合流異常に合併した胆嚢癌の1例

われわれは重複総胆管でその一方に膵管が合流異常していた胆嚢癌の1症例を経験した.症例は75歳の女性で腹部エコー検査にて胆嚢内に腫瘤を認め, 精査加療のため入院した. 胆嚢癌の診断のもとに開腹術を行い, 拡大胆嚢摘出術の後, 術中胆道造影を施行したところ, 総胆管が十二指腸に逆Y型に重複して開口し, その一方の肛側総胆管の上流に膵管が合流していた. 重複総胆管, 肝管切除し, 総胆管空腸吻合による胆道再建術を行った. 術後MRSA腸炎を併発し, 腎不全と多臓器不全に陥り, 術後30日目に死亡した. 胆嚢癌は易出血性で径4cmの乳頭型腺癌にくわえ, 胆嚢粘膜内に腺癌が多発していた. 膵・胆管合流異...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 36; no. 5; pp. 378 - 382
Main Authors 水本, 正剛, 岡野, 錦弥, 佐々木, 昌也, 黒川, 英司, 谷口, 春生, 高見, 康二, 檜谷, 義美, 山本, 仁, 梅下, 浩司, 明石, 英男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.05.2003
一般社団法人日本消化器外科学会
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery
Subjects
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.36.378

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Summary:われわれは重複総胆管でその一方に膵管が合流異常していた胆嚢癌の1症例を経験した.症例は75歳の女性で腹部エコー検査にて胆嚢内に腫瘤を認め, 精査加療のため入院した. 胆嚢癌の診断のもとに開腹術を行い, 拡大胆嚢摘出術の後, 術中胆道造影を施行したところ, 総胆管が十二指腸に逆Y型に重複して開口し, その一方の肛側総胆管の上流に膵管が合流していた. 重複総胆管, 肝管切除し, 総胆管空腸吻合による胆道再建術を行った. 術後MRSA腸炎を併発し, 腎不全と多臓器不全に陥り, 術後30日目に死亡した. 胆嚢癌は易出血性で径4cmの乳頭型腺癌にくわえ, 胆嚢粘膜内に腺癌が多発していた. 膵・胆管合流異常が膵液の胆管内逆流を来し, 慢性の化学的刺激が胆嚢癌を発生させたと推測される. これらの先天的な異常は胎生初期のhepatic diverticulumのhepatic antrumやdorsal pancreasの形成・融合不全によるものと思われた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.36.378