Cavernomatous transformationの形成により,繰り返し肝動脈塞栓療法を施行し得た門脈腫瘍栓合併肝細胞癌の1例

症例は54歳男性.昭和47年健診にて肝障害を指摘されたが放置.昭和63年再度肝障害を指摘され,腹部超音波検査を行ったところ,肝右葉に径65mmの腫瘍を認め,精査目的にて当科受診した.諸検査にて肝右葉内に多発性の転移を伴った肝硬変合併肝細胞癌と診断し,肝動脈塞栓療法を施行した.その後超音波検査で門脈腫瘍塞栓の存在が疑われ,各種画像診断て左葉への転移と門脈本幹から右枝にかけて門脈周囲に索状の脈管構造が認められた.門脈右枝末梢の血流が検出されていることから側副血行路が形成されていると考え,左右肝動脈に繰り返し塞栓療法を行ったが肝機能の低下は認めず,良好な予後が得られた.肝細胞癌による門脈腫瘍栓は二次...

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Published in肝臓 Vol. 34; no. 12; pp. 1002 - 1006
Main Authors 水野, 幸一, 竹田, 広樹, 小貫, 誠, 高橋, 正一郎, 南部, かおり, 秋田, 泰, 手塚, 貴志, 三田村, 圭二, 井上, 徹也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 25.12.1993
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.34.1002

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Summary:症例は54歳男性.昭和47年健診にて肝障害を指摘されたが放置.昭和63年再度肝障害を指摘され,腹部超音波検査を行ったところ,肝右葉に径65mmの腫瘍を認め,精査目的にて当科受診した.諸検査にて肝右葉内に多発性の転移を伴った肝硬変合併肝細胞癌と診断し,肝動脈塞栓療法を施行した.その後超音波検査で門脈腫瘍塞栓の存在が疑われ,各種画像診断て左葉への転移と門脈本幹から右枝にかけて門脈周囲に索状の脈管構造が認められた.門脈右枝末梢の血流が検出されていることから側副血行路が形成されていると考え,左右肝動脈に繰り返し塞栓療法を行ったが肝機能の低下は認めず,良好な予後が得られた.肝細胞癌による門脈腫瘍栓は二次性肝外門脈閉塞症の一因とされているが,本例のような側副血行路の形成の報告は少なく,側副血行路形成の機序や治療方針の検討からも示唆に富む症例と考えられ報告する.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.34.1002