癌性胸膜炎・心膜炎との鑑別を要した結核性胸膜炎・心膜炎の1例

要旨: 症例は72歳女性. 労作時呼吸困難, 両側下腿浮腫を主訴に近医受診. 胸部X線で左胸水貯留を指摘され, 当院紹介受診となった. 胸部CTで左優位の両側胸水貯留, 心嚢水貯留を認めた. 左胸腔穿刺を実施したところ, 胸水は血性でリンパ球優位の漏出性胸水であり, 細菌学的検査は陰性, 細胞診で悪性細胞は検出されなかった. 血液検査でsIL-2Rが高値であったことから, 悪性リンパ腫による癌性胸膜炎, 心膜炎を疑った. 精査目的の局麻下胸腔鏡検査で左背側下部の壁側胸膜に限局する発赤, 粘膜不整があり, 同部位からの胸膜生検で肉芽腫を認めた. また心嚢穿刺を行ったところHb 7.3g/dLの血...

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Published in結核 Vol. 97; no. 2; pp. 73 - 77
Main Authors 御園生昌史, 和田広, 田中妥典, 井上修平, 尾崎良智, 大内政嗣, 赤澤彰
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本結核・非結核性抗酸菌症学会 15.03.2022
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ISSN0022-9776

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Summary:要旨: 症例は72歳女性. 労作時呼吸困難, 両側下腿浮腫を主訴に近医受診. 胸部X線で左胸水貯留を指摘され, 当院紹介受診となった. 胸部CTで左優位の両側胸水貯留, 心嚢水貯留を認めた. 左胸腔穿刺を実施したところ, 胸水は血性でリンパ球優位の漏出性胸水であり, 細菌学的検査は陰性, 細胞診で悪性細胞は検出されなかった. 血液検査でsIL-2Rが高値であったことから, 悪性リンパ腫による癌性胸膜炎, 心膜炎を疑った. 精査目的の局麻下胸腔鏡検査で左背側下部の壁側胸膜に限局する発赤, 粘膜不整があり, 同部位からの胸膜生検で肉芽腫を認めた. また心嚢穿刺を行ったところHb 7.3g/dLの血性心嚢水590mLを排液し, 心嚢水中ADAは48.8U/Lと高値を示した. これらの結果より結核性胸膜炎, 心膜炎と診断し, 心嚢水貯留により心不全症状を呈していると判断した. 4剤の結核標準治療を開始後, 自覚症状は改善し, 胸水, 心嚢水は増加なく経過した. 結核性心膜炎はまれな肺外結核である. 血性の心嚢水は癌性心膜炎との鑑別を要するが, 心嚢水中のADAと胸膜生検が診断に有用であった症例を経験したので報告する.
ISSN:0022-9776