健常者における乳頭-中心窩傾斜

【目的】健常者の中心窩は視神経乳頭中心を通る水平経線よりやや下方に位置する, これを[乳頭-中心窩傾斜]と仮に呼ぶ. 米国人正常者42例の検討では, 中心窩は乳頭を通る水平経線から0.3乳頭径下方にあり, 乳頭-中心窩傾斜の角度は7.25°±2.57°であった. 角度の左右差は1.61°±1.22°であった. 乳頭-中心窩傾斜についての基礎資料を得る目的で, 顕性斜視がない集団について検討した. 【対象と方法】顕性斜視がない日本人正常者38名(男性8名, 女性30名, 21歳~68歳)を対象とした前向きコホート研究である. クリニックのスタッフ・その家族・本学学生に協力を求めた. 矯正視力が1...

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Published in日本視能訓練士協会誌 Vol. 39; p. 256
Main Authors 若杉恵子, 服部円香, 伊佐敷靖
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本視能訓練士協会 29.12.2010
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ISSN0387-5172

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Summary:【目的】健常者の中心窩は視神経乳頭中心を通る水平経線よりやや下方に位置する, これを[乳頭-中心窩傾斜]と仮に呼ぶ. 米国人正常者42例の検討では, 中心窩は乳頭を通る水平経線から0.3乳頭径下方にあり, 乳頭-中心窩傾斜の角度は7.25°±2.57°であった. 角度の左右差は1.61°±1.22°であった. 乳頭-中心窩傾斜についての基礎資料を得る目的で, 顕性斜視がない集団について検討した. 【対象と方法】顕性斜視がない日本人正常者38名(男性8名, 女性30名, 21歳~68歳)を対象とした前向きコホート研究である. クリニックのスタッフ・その家族・本学学生に協力を求めた. 矯正視力が1.0以上で, 立体視が良好で, 両眼開放下で眼位ずれおよび複視がないことを確認した. 説明による同意を得た後, Bixenmanらの方法によって, 眼底写真から乳頭-中心窩傾斜の角度を求めた. 使用した眼底カメラはKOWA製VX-10iで, その光軸に固有の回転があったので, 得られたデータを補正した. 【結果】検討した集団の乳頭-中心窩傾斜角は7.10°±3.93°(n=76)であった. その左右差は4.5°であった. 【考察】上記の結果はBixenmanらの結果とほぼ合致した. 屈折値および年齢との相関を統計的に検討したが, 有意差はなかった. また, 角度の左右差と年齢との相関もなかった. 健常者の乳頭-中心窩傾斜は米国人と同様に約7°である. 正常者における乳頭-中心窩傾斜の知見は回旋異常を評価する場合の基準となるであろう. 【文献】Bixenman WW, von Noorden, GK. Apparent foveal displacement in normal subjects and in cyclotropia. Ophthalmology 1982;89:58-62. 【謝辞】大庭紀雄教授(愛知淑徳大学)の御指導を感謝します.
ISSN:0387-5172