転倒転落防止に対する看護師の意識の変化について

当院では, 平成13年に医療安全対策委員会を発足し, 医療事故防止に取り組んできた. 中でも転倒転落に対する看護師の意識変化がアンケートによって確認出来たのでここに報告する. アンケート結果の前に, まず当院が行なっている転倒転落防止対策を紹介する. 患者や家族と一緒に, 入院時にアセスメントスコアシートを作成する. このシートによって患者の転倒転落危険度が1~3に区分され, 危険度認知シール貼付の実施や, 家族に対して資料の配布並びに説明が行なわれ, 患者の状態を看護師だけでなく家族とともに把握出来るようになった. また, マニュアルやフローチャートを作成して, 転倒転落発生時の対応をスムー...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本農村医学会雑誌 Vol. 54; no. 3; p. 545
Main Authors 山下茂子, 井坂茂夫, 藤田敬子, 松田浩子, 田中美代子, 山本利子, 市村小百合, 中村早苗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本農村医学会 01.09.2005
Online AccessGet full text
ISSN0468-2513

Cover

More Information
Summary:当院では, 平成13年に医療安全対策委員会を発足し, 医療事故防止に取り組んできた. 中でも転倒転落に対する看護師の意識変化がアンケートによって確認出来たのでここに報告する. アンケート結果の前に, まず当院が行なっている転倒転落防止対策を紹介する. 患者や家族と一緒に, 入院時にアセスメントスコアシートを作成する. このシートによって患者の転倒転落危険度が1~3に区分され, 危険度認知シール貼付の実施や, 家族に対して資料の配布並びに説明が行なわれ, 患者の状態を看護師だけでなく家族とともに把握出来るようになった. また, マニュアルやフローチャートを作成して, 転倒転落発生時の対応をスムーズに行なう事により, 患者側, 病院側両者のリスクを軽減することが出来た. 特に病院側リスクでは, 転倒転落発生報告が増加傾向にあるものの, クレーム(医療事故)としての報告が無くなった事は, 成果が実ったと高く評価できる. 先に述べた成果を生んだ要因として, 看護師の意識変化が大きく関わっている事が考えられ, この変化を確認するためアンケートを実施した. アンケートは岩本氏らによる著書「看護・医療における事故防止の為の教育方法の開発に関する研究」を参考に, 4つのカテゴリー「危険性に対する意識・気づき・予測」「個々にあった看護計画・実施」「転倒転落時の看護師の判断と行動」「事故の振り返り」に分け作成した. アンケートにて確認できた事は, スコアシートの作成により危険度の意識付けが出来, 危険性に対する予測(直感・感性・あれ? いつもと違う), 危険予知能力を高められたという事, 危険度を踏まえたうえで, 患者個々にあった看護計画が実施されている事, 転倒転落時の対応が統一され, 迅速かつ的確に処置や対処が行なわれるようになった事, インシデント・アクシデント症例の分析やカンファレンスによって, 情報を共有化することで知識が増え, 即現場に生かされている事, などである. 結果としてスコアシートの有効活用ができ, 危険性に対する意識が高まって, 患者個々に合わせた防止対策になったと考えられる. また, 看護師の意識が高く保たれている事によって, 看護師のスキルアップとともに, 看護レベルが引き上げられ, 看護体制が向上しただけでなく他の成果も生んだものと考えられる.
ISSN:0468-2513