小腸腫瘍による腸重積の超音波像

<はじめに>今日, 腸重積症の診断と治療における超音波検査の有用性は数多く報告されている. 今回我々は, 器質的疾患合併による腸重積を3症例経験したので, 腹部超音波およびCT検査での画像所見を添えて報告する. <症例>症例1:45歳女性. 主訴:腹痛. 既往歴:31歳時, 右乳癌手術. 家族歴:特記すべきことなし. 現病歴:平成7年9月頃より腹部全体の軽度痛みと共に嘔気が出現. 以後幾度かの同様な症状を繰り返し, 近医にて点滴加療されていた. 平成9年8月15日, 症状が出現し, 増強したため, 当院内科を受診した. 貧血黄疸なし. 左下腹部に小児手挙大の腫瘤が触れ,...

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Published in日本農村医学会雑誌 Vol. 54; no. 3; p. 532
Main Authors 矢崎久巳, 田中史朗, 奥村功, 今村裕司, 今井信輔, 野田秀樹, 三輪正治, 西田知弘, 小森竜太, 桐山香奈子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本農村医学会 01.09.2005
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ISSN0468-2513

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Summary:<はじめに>今日, 腸重積症の診断と治療における超音波検査の有用性は数多く報告されている. 今回我々は, 器質的疾患合併による腸重積を3症例経験したので, 腹部超音波およびCT検査での画像所見を添えて報告する. <症例>症例1:45歳女性. 主訴:腹痛. 既往歴:31歳時, 右乳癌手術. 家族歴:特記すべきことなし. 現病歴:平成7年9月頃より腹部全体の軽度痛みと共に嘔気が出現. 以後幾度かの同様な症状を繰り返し, 近医にて点滴加療されていた. 平成9年8月15日, 症状が出現し, 増強したため, 当院内科を受診した. 貧血黄疸なし. 左下腹部に小児手挙大の腫瘤が触れ, 同部位に圧痛を認めたが, 筋性防御は認めなかった. 症例2:1歳男性. 主訴:血便, 熱発. 既往歴・家族歴:特記すべきことなし. 現病歴:平成15年9月11日に2度の下痢をし, 翌日には粘血便となったため, 両親が心配し当院小児科を受診した. 現症:38.5度前後の熱発, キャンピロバクター腸炎. 症例3:5歳男性. 主訴:腹痛. 既往歴・家族歴:特記すべきことなし. 現病歴:平成15年1月31日より間欠的に腹痛と嘔吐があり, 翌日も改善がみられないため救急車にて当院へ搬送された. <考察>今回我々は, 器質的疾患合併による腸重積を3症例経験した. 日常診療にて間歇的腹痛, 嘔吐, 血便の3主徴を呈し, 腫瘤触知をするとされているが, 先に述べた3主徴, 腫瘤触知の症状のそろわない症例に遭遇することも少なくなく, このような場合, 特に超音波検査の有用性が高く, 超音波検査を施行することで, この疾患の特徴的な像であるmultiple concentric ring sign(target sign)つまり, 重積した層状の腸管壁, 進入したstrangulated mesenteryやLNを描出することができる. 症例1, 症例2では小腸ム小腸型腸重積症であり, 症例3は小腸ム大腸型腸重積であった. 鑑別には一見して重積の外形寸法, 観察部位の違いで判断の一考となる. 整復後の腸管の浮腫上の変化や, 腫大した腸管膜リンパ節の確認が出来るのも超音波の利点である. <結果及び結語>1.今回経験した腸重積症(小腸-小腸)は超音波上multiple concentric ring signがみられ, 外形寸法が20mmから25mmと比較的大きいものであった. 2.小児の腸重積整復を施行しても整復困難な症例に対しては, 器質的疾患を考慮する必要がある. 3.成人の腸重積症の起因は80%以上腫瘍病変が疑われ, 術前に質的診断を行なうことでクオリティオブケアーにつながると考えた. 4.CTで小腸大腸の腸管の把握が可能なため, 診断の一助となる.
ISSN:0468-2513