頭頸部悪性腫瘍患者の心理・性格特性

「はじめに」 「ある種の心理あるいは性格を有する人々の間に, 高率に悪性腫瘍が発生する傾向にある.」という考えは, 一見, 十分な根拠に乏しい感があるが, 古代ギリシャのGalen以来, 諸家により, それを支持するいくつかの見解が述べられている1). 例えば, 18-19世紀には, 精神的苦悩, 不安, 叶うことのない願望, 抑うつなどが癌の誘因になりうるとする報告があるが, まとまった数の患者を対象として検討されたことはなかった1). 近代的手法により, 心理・性格と癌の発生の問題が検討されるようになったのは, 最近の30年間位のことであり, 肺癌患者は情動や葛藤の表出が乏しく, 神経症的...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 94; no. 6; pp. 767 - 889
Main Authors 山際幹和, 原田輝彦, 久保将彦, 宮原幸則, 雨皿亮, 坂倉康夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本耳鼻咽喉科学会 20.06.1991
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ISSN0030-6622

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Summary:「はじめに」 「ある種の心理あるいは性格を有する人々の間に, 高率に悪性腫瘍が発生する傾向にある.」という考えは, 一見, 十分な根拠に乏しい感があるが, 古代ギリシャのGalen以来, 諸家により, それを支持するいくつかの見解が述べられている1). 例えば, 18-19世紀には, 精神的苦悩, 不安, 叶うことのない願望, 抑うつなどが癌の誘因になりうるとする報告があるが, まとまった数の患者を対象として検討されたことはなかった1). 近代的手法により, 心理・性格と癌の発生の問題が検討されるようになったのは, 最近の30年間位のことであり, 肺癌患者は情動や葛藤の表出が乏しく, 神経症的傾向が低いこと2)3)や, 子宮頸癌患者では, 発病前に希望を失ってしまうような厳しい生活状態があった例が多いことが述べられている4). ごく最近, 小川と田島5)が以下のごとく要約したように, これは決して無視できない見解であり, その可能性に関しては, 今後, 十分に検討の余地がある.
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