吸引肺動脈血の細胞診で診断しえた肺動脈腫瘍塞栓微小血管症の1例

《Abstract》症例は69歳男性. 食道胃接合部癌に対して化学療法予定であった. 1カ月前から労作時呼吸困難があり, 定期外来受診時に酸素飽和度の低下を認めた. 経胸壁心臓超音波検査で肺高血圧症が疑われ, 精査加療目的に緊急入院した. 造影CT検査で肺動脈血栓はみられず, 肺血流シンチグラフィでは両肺野末梢に散在する淡い欠損像がみられた. 右心カテーテル検査では平均肺動脈圧が48mmHg, 肺血管抵抗が10.3 WUであり, 肺動脈から吸引した血液の細胞診で腺癌が認められたため, 肺動脈腫瘍塞栓微小血管症(PTTM)による肺高血圧症であることが確定診断された. ドブタミンの経静脈投与とマシ...

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Published in心臓 Vol. 57; no. 5; pp. 478 - 485
Main Authors 中村真紀, 吉井大智, 加島裕美, 林雄介, 齋藤聡男, 仲川将志, 占野賢司, 松村嘉起, 松本亮, 阿部幸雄, 成子隆彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本心臓財団・日本循環器学会 15.05.2025
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ISSN0586-4488

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Summary:《Abstract》症例は69歳男性. 食道胃接合部癌に対して化学療法予定であった. 1カ月前から労作時呼吸困難があり, 定期外来受診時に酸素飽和度の低下を認めた. 経胸壁心臓超音波検査で肺高血圧症が疑われ, 精査加療目的に緊急入院した. 造影CT検査で肺動脈血栓はみられず, 肺血流シンチグラフィでは両肺野末梢に散在する淡い欠損像がみられた. 右心カテーテル検査では平均肺動脈圧が48mmHg, 肺血管抵抗が10.3 WUであり, 肺動脈から吸引した血液の細胞診で腺癌が認められたため, 肺動脈腫瘍塞栓微小血管症(PTTM)による肺高血圧症であることが確定診断された. ドブタミンの経静脈投与とマシテンタンの内服投与を開始した. 経過中に肺炎を併発し, 全身状態が不良になったため, 化学療法は開始できなかった. 呼吸状態は徐々に悪化し, 第11病日に死亡した. PTTMは, 呼吸困難が出現してからの生存期間は4-12週と, きわめて進行が早く, 生前の診断が困難とされる. 今回, 吸引肺動脈血の細胞診によりPTTMと確定診断した症例を経験したので報告する.
ISSN:0586-4488