新たな知の構築に向けて進化する看護研究方法-質的研究法の視点から

我が国で, 質的研究が独自のものだと認識されるようになってから20年が経過したといわれる. いまやコクランライブラリーでさえ, 質的研究の成果をどう取り入れるのかを検討している. 質的研究によって導き出されたエビデンスを統合する試みも, これまで以上に重視されている. ところが, 最近, これまでに発表された質的研究論文のクリティークを行ったところ, 研究法を適切に使用したものが予想以上に少ないことがわかり, がっかりしてしまった. この10年の間に, 何らかの質的研究法を用いたと標榜する論文の数は劇的に増えているのだが, 中味を読むと, 研究法を無視したデータ収集と分析が多い. そして, そ...

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Published in日本看護科学会誌 Vol. 32; no. 2; p. 92
Main Author 戈木クレイグヒル滋子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本看護科学学会 20.06.2012
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ISSN0287-5330

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Summary:我が国で, 質的研究が独自のものだと認識されるようになってから20年が経過したといわれる. いまやコクランライブラリーでさえ, 質的研究の成果をどう取り入れるのかを検討している. 質的研究によって導き出されたエビデンスを統合する試みも, これまで以上に重視されている. ところが, 最近, これまでに発表された質的研究論文のクリティークを行ったところ, 研究法を適切に使用したものが予想以上に少ないことがわかり, がっかりしてしまった. この10年の間に, 何らかの質的研究法を用いたと標榜する論文の数は劇的に増えているのだが, 中味を読むと, 研究法を無視したデータ収集と分析が多い. そして, そのような論文の多くは, 概念の抽出と統合がイマイチなのである. 私は, 研究法とは単なる『技術』にすぎないと考えている. しかし, 技術がなければよい研究はできない. 質的研究の場合には, リッチなデータを収集した上で, データから概念を抽出し, 抽出した概念を関係づける技術が必要であるが, これらの技術を高めるためには, 解釈の根拠を言語化し, 議論できる仕組みが大切だと思われる.
ISSN:0287-5330