フッ素-ランタン二段処理法による乳歯象牙質の難溶化に関する研究

「緒言」乳歯う蝕は, 小児の口腔と全身の健全な発達や発育に悪影響を及ぼす撲滅すべき疾患である. その予防法の一つとして現在, フッ化物の局所的応用がよく用いられ効果を挙げている. しかし, やや減少傾向にあるとはいえ, 小児のう蝕はいまだ蔓延しており, 3歳児におけるう蝕有病者率は72%に達している. しかも処置完了者率は僅か2%に過ぎないのが現状である. その理由として, 乳歯は形態的に食物が停滞しやすくて歯質も薄く, アパタイト結晶も小さいので溶解性が高い. さらに小児は口腔清掃が不充分で停滞性のある食物摂取が多く, 自浄作用も不充分という環境におかれている. したがって, 乳歯は一たびう...

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Published in神奈川歯学 Vol. 24; no. 2; pp. 333 - 344
Main Authors 久保田守, 檜垣旺夫, 斎藤滋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 神奈川歯科大学学会 30.09.1989
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ISSN0454-8302

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Summary:「緒言」乳歯う蝕は, 小児の口腔と全身の健全な発達や発育に悪影響を及ぼす撲滅すべき疾患である. その予防法の一つとして現在, フッ化物の局所的応用がよく用いられ効果を挙げている. しかし, やや減少傾向にあるとはいえ, 小児のう蝕はいまだ蔓延しており, 3歳児におけるう蝕有病者率は72%に達している. しかも処置完了者率は僅か2%に過ぎないのが現状である. その理由として, 乳歯は形態的に食物が停滞しやすくて歯質も薄く, アパタイト結晶も小さいので溶解性が高い. さらに小児は口腔清掃が不充分で停滞性のある食物摂取が多く, 自浄作用も不充分という環境におかれている. したがって, 乳歯は一たびう蝕に罹患すると, 急速にしかも広範囲に進行してしまうのである. しかも, 自発的な受診ができず, 治療も困難であり, 二次う蝕も起こりやすい. このため, う蝕予防という観点からだけでなく, う蝕抑制という観点からも種々のフッ化物やその他の薬剤が考案され, 応用されてきた.
ISSN:0454-8302