高齢者 (80歳以上) 胸部大動脈疾患に対するステントグラフト内挿術早期成績の検討
「要旨」:【目的】胸部大動脈疾患に対する血管内ステントグラフト内挿術(TEVAR)は低侵襲治療として各施設で行われている. 当院の治療方針は, 胸部下行大動脈病変に関してはTEVARが第1選択である. しかし, 弓部分枝を巻き込む病変に対してはopen surgeryが第1選択で, 遠位弓部大動脈病変に対するTEVARは80歳以上の高齢者を含むhigh risk症例に限って解剖学的な適応を満たせば選択している. 今回, 当院における高齢者に対するTEVAR早期治療成績を検討した. 【方法】2007年1月から2010年6月までに当院にて施行したTEVAR施行症例119例を対象とし, 80歳以上の...
Saved in:
Published in | 日本血管外科学会雑誌 Vol. 21; no. 2; pp. 107 - 111 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本血管外科学会
25.04.2012
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 0918-6778 |
Cover
Summary: | 「要旨」:【目的】胸部大動脈疾患に対する血管内ステントグラフト内挿術(TEVAR)は低侵襲治療として各施設で行われている. 当院の治療方針は, 胸部下行大動脈病変に関してはTEVARが第1選択である. しかし, 弓部分枝を巻き込む病変に対してはopen surgeryが第1選択で, 遠位弓部大動脈病変に対するTEVARは80歳以上の高齢者を含むhigh risk症例に限って解剖学的な適応を満たせば選択している. 今回, 当院における高齢者に対するTEVAR早期治療成績を検討した. 【方法】2007年1月から2010年6月までに当院にて施行したTEVAR施行症例119例を対象とし, 80歳以上の高齢者群(H群)38例と80歳未満の対照群(C群)81例の2群間における術前, 術中, 術後因子に対し比較検討を行った. 【結果】平均年齢はH群82.4±2.5歳, C群69.7±9.3歳であり, 男性はH群28例(73.6%), C群67例(82.7%)であった. 術前因子は糖尿病, 高血圧症, 高脂血症, 閉塞性肺疾患, 慢性腎不全, 冠動脈疾患に有意差を認めなかったが, 担癌症例はH群に多かった(p<0.001). 術中因子は使用デバイス, アプローチ部位に有意差を認めなかった. 手術時間, 麻酔時間はH群でそれぞれ151.9±69.4分, 243.2±77.4分であり, C群で159.9±109.7分, 243.2±113.1分であった. H群に在院死亡は認めなかったが, C群では5例(6.2%)に認めた. 術後因子においても主要合併症, 術後在院日数, 退院形式に有意差を認めなかった. 【結論】TEVARは高齢者においても安全で有効な治療手段と考えられた. |
---|---|
ISSN: | 0918-6778 |