大動脈解離の心嚢内破裂後に心膜炎および遅発性心タンポナーデをきたした1例

症例は60歳, 男性, 腰背部痛の精査中にショックとなった. 心エコー図では大動脈が拡大し, 右室が前面の腫瘤によって圧排されており, 造影CTでは上行大動脈から腎動脈分岐部に及ぶ大動脈解離が認められた. 大動脈解離の心嚢内破裂と診断され, ただちに心臓血管外科に転院された. すでに解離腔の血栓性閉塞が認められており, 血圧も安定したため, 降圧薬の内服と安静で保存的に治療され, CTによる経時的観察で心嚢内血腫は次第に消失した. しかしながら, 倦怠感を自覚するようになり, 約1ヵ月後に精査目的で当院へ転院された. また, この頃より低血圧および発熱をきたすようになり, 炎症反応の亢進と心電...

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Published in心臓 Vol. 36; no. 9; pp. 641 - 646
Main Authors 久我敦, 清水雅俊, 三輪陽一, 高橋華代, 島尚司, 辰巳和宏, 岡田敏男, 西脇正美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 丸善 15.09.2004
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ISSN0586-4488

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Summary:症例は60歳, 男性, 腰背部痛の精査中にショックとなった. 心エコー図では大動脈が拡大し, 右室が前面の腫瘤によって圧排されており, 造影CTでは上行大動脈から腎動脈分岐部に及ぶ大動脈解離が認められた. 大動脈解離の心嚢内破裂と診断され, ただちに心臓血管外科に転院された. すでに解離腔の血栓性閉塞が認められており, 血圧も安定したため, 降圧薬の内服と安静で保存的に治療され, CTによる経時的観察で心嚢内血腫は次第に消失した. しかしながら, 倦怠感を自覚するようになり, 約1ヵ月後に精査目的で当院へ転院された. また, この頃より低血圧および発熱をきたすようになり, 炎症反応の亢進と心電図でST上昇が認められ, 奇脈を呈するようになった. 心エコー図検査で心嚢液の全周性貯留と右房, 右室の虚脱が認められたので, 心嚢液の試験穿刺が行われたところリンパ球優位の炎症であった. 大動脈解離の再発ではないと判断され, 心嚢ドレナージ術が施行された. ドレナージ後に心嚢液の再貯留は認められず, 軽快退院となった. 本症例は大動脈解離の心嚢内破裂による血腫が吸収される過程で, 二次的に自己免疫機序による心膜炎が生じて遅発性心タンポナーデをきたしたものと考えられた.
ISSN:0586-4488