肺腺癌における癌細胞の免疫組織学的表現型とcommitted precursor cellとの関係

原発性肺腺癌における腫瘍細胞は, その特徴からクララ細胞型, II型肺胞上皮型などに分類される. しかし癌細胞には分類出来ない異型細胞も少なくない. 癌細胞はそのcommitted precursor cellの特徴を発現するとの前提で, 上皮細胞の標識を用いて癌細胞の起源を示す細胞同定を試みた. 材料は高分化型腺癌(粘液産生細胞は除外)合計10例の手術材料(日赤医療センター武村教授の提供)でパラフィン標本と無固定凍結標本を作製し免疫ペルオキシダーゼ法, 蛍光抗体法を実施した. 抗体はcytokeratin(CK)14(上位気道の基底細胞など1部の標識), CK17(気道の全基底細胞), CC...

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Published inJournal of Nippon Medical School Vol. 70; no. 6; p. 579
Main Authors 新井悟, 森修, 大秋美治, 金恩京, 藤原正和, 潘欣, 枝川聖子, 清水一, ガジザデモハマッド, 川並汪一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 15.12.2003
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ISSN1345-4676

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Summary:原発性肺腺癌における腫瘍細胞は, その特徴からクララ細胞型, II型肺胞上皮型などに分類される. しかし癌細胞には分類出来ない異型細胞も少なくない. 癌細胞はそのcommitted precursor cellの特徴を発現するとの前提で, 上皮細胞の標識を用いて癌細胞の起源を示す細胞同定を試みた. 材料は高分化型腺癌(粘液産生細胞は除外)合計10例の手術材料(日赤医療センター武村教授の提供)でパラフィン標本と無固定凍結標本を作製し免疫ペルオキシダーゼ法, 蛍光抗体法を実施した. 抗体はcytokeratin(CK)14(上位気道の基底細胞など1部の標識), CK17(気道の全基底細胞), CC10(クララ細胞), SP-A(II型上皮サーファクタントプロテイン), ABCA3(II型上皮封入体限界膜)を, また汎基底膜collagen typeIVと気道上皮限定型の基底膜collagen typeVIIを用いた. その結果SPAとABCA3はすべての症例に陽性でII型上皮細胞の性質が確認された. CC10, CK17, CK14はそれぞれ80%, 60%, 10%の患者に認めたが, これらの標識が同一癌細胞に出現する事実は確認できなかった. collagen typeIVと異なりtypeVIIはいずれの癌細胞も発現しなかった. 以上, 腺癌細胞はII型上皮とクララ細胞の特徴を, さらには基底細胞の特徴的標識を発現した. これはcommitted cellが気道と肺胞のそれぞれの上皮に分化し得るprecursor cellである可能性を示唆している. この細胞はいわゆる成熟型幹細胞(adult stem cell)とどのような関連性を持っているか興味深い.
ISSN:1345-4676