Polyagglutination T検出に関する現状での問題点
目的:Polyagglutination Tは, 細菌感染症患者赤血球が, 菌の産生するノイラミニダーゼによって, 脱シアル酸化されて起きることは知られている. その検出は, 交差試験での副試験や, レクチンとの反応等によって行われているが, 副試験の省略や, 確立されたレクチン検定法の不備等, 問題が多いように思われる. 本演題では, まず健康成人血清(血漿)中のT抗体価を, ノイラミニダーゼ処理T化赤血球で測定し, 抗体価の持続日数, 保存状態による影響を観察し, 現状での問題点を検討する. 材料及び方法: 1. 50mUのノイラミニダーゼ(生化学工業EC3.2.1.18)で, O型人赤血...
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          | Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 43; no. 6; pp. 1007 - 1008 | 
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| Main Authors | , , , , , | 
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            日本輸血学会
    
        01.12.1997
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| ISSN | 0546-1448 | 
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| Summary: | 目的:Polyagglutination Tは, 細菌感染症患者赤血球が, 菌の産生するノイラミニダーゼによって, 脱シアル酸化されて起きることは知られている. その検出は, 交差試験での副試験や, レクチンとの反応等によって行われているが, 副試験の省略や, 確立されたレクチン検定法の不備等, 問題が多いように思われる. 本演題では, まず健康成人血清(血漿)中のT抗体価を, ノイラミニダーゼ処理T化赤血球で測定し, 抗体価の持続日数, 保存状態による影響を観察し, 現状での問題点を検討する. 材料及び方法: 1. 50mUのノイラミニダーゼ(生化学工業EC3.2.1.18)で, O型人赤血球を1時間処理して人工T化赤血球を作製. 2. 健康成人(男性100名, 女性260名, 年齢30~64)血清中のT抗体価の分布状況を調査. 3. 4℃及び冷凍保存(-30℃)での抗体価の変動を調査. 4. 血漿, 血小板製剤の抗体価測定. 成績: 1. 健康成人血清中のT抗体価の分布は, ×1~×128で, やや男性<女性の傾向が認められた. 2. 4℃保存血清では, 21日間抗体価の低下は見られなかった. また, 2ヵ月間冷凍保存(-30℃)した血清でも, 抗体価は維持されていた. 3. 血漿製剤については, T抗体の存在が確認された. 各検討は現在進行中であり, 詳細についてはさらに例数を増やして当日発表する. 考察:今回の成績より, 血液中のT抗体は, 検体の新鮮度に関わり無く存在することが確認され, T化赤血球との反応の有無(強弱)は, 患者赤血球のT化の進行状態(脱シアル酸化の程度)とT抗体価との関係により左右されると考えられる. 当院では, 1994年度血液等の穿刺液より検出された細菌112株中25株が, TもしくはTk化を起こし得る菌種であった. しかし, 現在まで, 赤血球製剤での副試験及びレクチン(平成2年より実施)との反応で, T・Tk化した患者を発見した経験はない. 輸血療法の適正化に関するガイドラインによると, 一定条件のもとで副試験や, 血漿・血小板製剤の交差試験は省略してよいことになっている. 当院でも, 血漿・血小板製剤は無チェックで輸血されており, T・Tk化を起こした患者に輸血した可能性があることは否定できない. より安全な輸血を行うためには, 感染症患者情報等, 輸血業務に関連のある情報を円滑に入手できる体制を作り, 臨床へも注意を促すとともに, 赤血球製剤以外の輸血時の交差試験省略の適否等, 輸血ガイドラインを再考する必要性があることを痛感した. | 
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| ISSN: | 0546-1448 |