17年間にわたる慢性経過を呈し, 診断に苦慮した多発性硬化症の1例

要旨:脂肪抑制STIR法MRIが, 脊髄病変の描出に極めて有効であった多発性硬化症(MS)の39歳男性例を報告した. 22歳時に四肢感覚障害で発症し, 緩徐に進行, 歩行・排尿障害を呈した. 36歳の初診時に脊髄疾患を疑われたが, ルーチンMRIで異常を認めず, 39歳時に入院精査となった. Romberg徴候, 失調性歩行, 四肢遠位の筋力・感覚低下, 体性感覚誘発電位でN20潜時45.3msecと延長, STIR法で延髄~第1胸椎レベルの脊髄病変を認めた. オリゴクローナルバンド陽性でMSと診断され, ステロイドパルス療法で歩行速度改善し, 退院した. 本例のようなルーチンMRIで病変の描...

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Published in運動障害 Vol. 21; no. 1; pp. 23 - 27
Main Authors 大竹はるか, 崎山快夫, 大塚美恵子, 高嶋浩一, 植木彰
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本運動障害研究会 15.07.2011
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ISSN0917-5601

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Summary:要旨:脂肪抑制STIR法MRIが, 脊髄病変の描出に極めて有効であった多発性硬化症(MS)の39歳男性例を報告した. 22歳時に四肢感覚障害で発症し, 緩徐に進行, 歩行・排尿障害を呈した. 36歳の初診時に脊髄疾患を疑われたが, ルーチンMRIで異常を認めず, 39歳時に入院精査となった. Romberg徴候, 失調性歩行, 四肢遠位の筋力・感覚低下, 体性感覚誘発電位でN20潜時45.3msecと延長, STIR法で延髄~第1胸椎レベルの脊髄病変を認めた. オリゴクローナルバンド陽性でMSと診断され, ステロイドパルス療法で歩行速度改善し, 退院した. 本例のようなルーチンMRIで病変の描出できないMSには, STIR法を試みる価値がある. 「はじめに」多発性硬化症(Multiple Sclerosis:MS)は, 時間的空間的に多発する中枢神経病変を特徴とする代表的な脱髄性疾患である. 男性より女性により多く, 発症年齢のピークは20歳代であるが, 50歳以降の発症も5%前後あるといわれる. 臨床経過により再発寛解型と慢性進行型に分類される.
ISSN:0917-5601