DNAメチル化による核内受容体AhR経路の制御 - ストレス応答と薬物相互作用における意義
「はじめに」筆者が所属する薬物代謝動態学分野の前教授である小澤正吾先生は, かつて本誌の総説の中でエピジェネティクス機構が及ぼす抗悪性腫瘍薬の感受性への影響ついて論じられた. エピジェネティクスとは, 塩基配列の変化を伴わずに遺伝子発現の情報を継承するメカニズムのことである. DNAのメチル化やヒストンタンパクの修飾, ノンコーディングRNAなどにより制御されることは, ご存知の方も多いと思う. 筆者はその当時から「薬物代謝動態の変動にエピジェネティクス機構が関わるのか」の問いに向き合い, さまざまな可能性を模索しながら研究を重ねてきた. 医薬品相互作用の観点からは, エピジェネティクス機構が...
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Published in | 医薬品相互作用研究 Vol. 48; no. 3; pp. 108 - 113 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
医薬品相互作用研究会
26.11.2024
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ISSN | 0385-5015 |
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Summary: | 「はじめに」筆者が所属する薬物代謝動態学分野の前教授である小澤正吾先生は, かつて本誌の総説の中でエピジェネティクス機構が及ぼす抗悪性腫瘍薬の感受性への影響ついて論じられた. エピジェネティクスとは, 塩基配列の変化を伴わずに遺伝子発現の情報を継承するメカニズムのことである. DNAのメチル化やヒストンタンパクの修飾, ノンコーディングRNAなどにより制御されることは, ご存知の方も多いと思う. 筆者はその当時から「薬物代謝動態の変動にエピジェネティクス機構が関わるのか」の問いに向き合い, さまざまな可能性を模索しながら研究を重ねてきた. 医薬品相互作用の観点からは, エピジェネティクス機構が関わる薬物動態の変動として, 薬物代謝酵素の誘導が重要であろう. その代謝酵素の誘導を転写レベルで制御しているのは, 芳香族炭化水素受容体(aryl hydrocarbon receptor, AhR)やプレグナンX受容体(pregnane X receptor, PXR), 恒常的活性化/アンドロスタン受容体constitutively active/androstane receptor, CAR)などの核内受容体である. |
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ISSN: | 0385-5015 |