子どもの支援・治療に活かすストレングス・モデル

「I. はじめに」児童青年精神医学領域における様々な疾患・障害の臨床においては薬物療法など狭義の医学的治療が担う部分が相対的に少なく, 子どもたちへの支援コンテンツの多くはいわゆる非薬物療法ともよばれる心理・社会的アプローチが大きな役割を果たしている. もちろん注意欠如・多動症(ADHD)に対するADHD治療薬や神経発達症の易刺激性に対して抗精神病薬が用いられるようになることで患児らの生活の質を改善できる薬物療法の担う役割は広がりつつある. しかし, 家族や学校, 地域において患児を取り巻く人々との関係性の課題や, 一般的に子どもたちに期待されている学習課題の持つ影響の大きさを考えると, これ...

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Published in児童青年精神医学とその近接領域 Vol. 63; no. 3; pp. 226 - 230
Main Author 井上祐紀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本児童青年精神医学会 01.06.2022
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ISSN0289-0968

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Summary:「I. はじめに」児童青年精神医学領域における様々な疾患・障害の臨床においては薬物療法など狭義の医学的治療が担う部分が相対的に少なく, 子どもたちへの支援コンテンツの多くはいわゆる非薬物療法ともよばれる心理・社会的アプローチが大きな役割を果たしている. もちろん注意欠如・多動症(ADHD)に対するADHD治療薬や神経発達症の易刺激性に対して抗精神病薬が用いられるようになることで患児らの生活の質を改善できる薬物療法の担う役割は広がりつつある. しかし, 家族や学校, 地域において患児を取り巻く人々との関係性の課題や, 一般的に子どもたちに期待されている学習課題の持つ影響の大きさを考えると, これからもこの領域の診療を受ける子どもたちの治療はいわゆる医学モデルからのアプローチだけでは立ち行かないのは明らかであろう. 本講演では子どもたちの支援・治療に欠かせないストレングス・モデルの視点がどのような背景で提唱され, 児童青年精神医学領域においてどのように応用されうるのかについて論じたいと考える.
ISSN:0289-0968