奇異性脳梗塞と肺血栓塞栓症を同時発症した卵円孔開存を伴う深部静脈血栓症の1例

症例は45歳女性. 呼吸困難, 右上下肢の麻痺, 意識障害を主訴に近医を受診した. 頭部および胸部CT検査の結果, 左中大脳動脈領域の脳梗塞と急性肺血栓塞栓症を同時に発症していた. 肺血栓塞栓症に対して人工呼吸管理下に血栓溶解療法と血栓吸引療法を施行し, 肺動脈圧は60/30mmHgから32/18mmHgへと著明に改善した. 急性期の経食道超音波検査では, 右心系の拡大, 心房中隔の奇異性運動と卵円孔開存が確認された. 静脈造影では, 下大静脈の壁外性の圧排所見と深部静脈血栓が認められた. 骨盤CT検査の結果より, 深部静脈血栓症の原因は巨大子宮筋腫により下大静脈が圧排され血流低下をきたしたた...

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Published in心臓 Vol. 36; no. 8; pp. 597 - 603
Main Authors 太田洋, 住吉正孝, 諏訪哲, 田村浩, 佐々木玲聡, 小島貴彦, 峰田自章, 小島諭, 中田八洲郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 丸善 15.08.2004
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ISSN0586-4488

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Summary:症例は45歳女性. 呼吸困難, 右上下肢の麻痺, 意識障害を主訴に近医を受診した. 頭部および胸部CT検査の結果, 左中大脳動脈領域の脳梗塞と急性肺血栓塞栓症を同時に発症していた. 肺血栓塞栓症に対して人工呼吸管理下に血栓溶解療法と血栓吸引療法を施行し, 肺動脈圧は60/30mmHgから32/18mmHgへと著明に改善した. 急性期の経食道超音波検査では, 右心系の拡大, 心房中隔の奇異性運動と卵円孔開存が確認された. 静脈造影では, 下大静脈の壁外性の圧排所見と深部静脈血栓が認められた. 骨盤CT検査の結果より, 深部静脈血栓症の原因は巨大子宮筋腫により下大静脈が圧排され血流低下をきたしたためと考えられた. 子宮筋腫手術における周術期の肺血栓塞栓症と脳梗塞のリスクを考慮し術前に永久留置型下大静脈フィルターを留置し, 脳梗塞については保存的に治療を行った. 第39病日, 腹式単純子宮全摘術施行. 特に合併症なく経過し, 51病日にリハビリテーションのため転院となった. 本症例は巨大子宮筋腫により生じた深部静脈血栓が原因で急性肺血栓塞栓症を生じ, 右心系の圧上昇に伴い卵円孔を通って左心系に血栓が流出, 奇異性脳梗塞をきたしたと考えられた.
ISSN:0586-4488