放射線により不可逆的に細胞周期停止した細胞の温度変化

「要旨」: 私たちは体調が優れない時にまず行うことは, 体温計を使って熱があるかどうかを調べることである. このように体温は, 私たちの身体が正常化どうかを判定する重要なパラメータであることは論を俟たない. 同様に細胞の健康状態について, 細胞の "体温" から何か情報を得ることはできないだろうか. 私たちは, 放射線照射により培養細胞が不可逆的に細胞分裂を停止した老化様細胞(早期老化細胞)の代謝を理解することを目的とし, 個々の細胞の温度を, 化学的蛍光プローブを利用して調べている. その結果, 当初の予想とは全く異なる結果を得つつある. 本稿ではまず非平衡解放系の熱力学...

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Published inThermal Medicine Vol. 40; no. 3; pp. 1 - 16
Main Authors 伊原智一, , 花澤恵子, 横谷明徳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ハイパーサーミア学会 15.09.2024
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ISSN1882-2576

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Summary:「要旨」: 私たちは体調が優れない時にまず行うことは, 体温計を使って熱があるかどうかを調べることである. このように体温は, 私たちの身体が正常化どうかを判定する重要なパラメータであることは論を俟たない. 同様に細胞の健康状態について, 細胞の "体温" から何か情報を得ることはできないだろうか. 私たちは, 放射線照射により培養細胞が不可逆的に細胞分裂を停止した老化様細胞(早期老化細胞)の代謝を理解することを目的とし, 個々の細胞の温度を, 化学的蛍光プローブを利用して調べている. その結果, 当初の予想とは全く異なる結果を得つつある. 本稿ではまず非平衡解放系の熱力学の観点から, 細胞が示す温度あるいは細胞内の温度分布と熱流の意味を提起する. さらに早期老化様細胞の特異な温度上昇を通して見えてきた細胞内の代謝について議論するとともに, 細胞内の自発的な機能構造の形成を誘導する熱流をモデル化するための熱拡散方程式に基づいた新たな理論解析を紹介する.
ISSN:1882-2576