洗浄,創傷被覆材による創傷治癒の試み

目的:ポピドンヨードをはじめとした消毒薬の組織障害性に関しては以前より指摘されている. しかし, 実際の医療現場においては消毒という医療行為は無意味にルーチン化されているのが現状である. また, 傷は濡らしてはならないといった指導もよく耳にする. 近年になりMoist wound healingといった概念が専門分野の垣根を越えて提起されており, 若干の文献的考察と創処置に対する当科の試みを紹介する. 方法:当科受診の外傷, 慢性皮膚潰瘍の患者に対してはまず生理食塩水または水道水にて創部の洗浄を行い, デブリードマン, 縫合などその損傷状況に適した処置を行った後, ほとんどの例で創傷被覆材によ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inJournal of Nippon Medical School Vol. 70; no. 6; p. 598
Main Authors 岡敏行, 百束比古
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 15.12.2003
Online AccessGet full text
ISSN1345-4676

Cover

More Information
Summary:目的:ポピドンヨードをはじめとした消毒薬の組織障害性に関しては以前より指摘されている. しかし, 実際の医療現場においては消毒という医療行為は無意味にルーチン化されているのが現状である. また, 傷は濡らしてはならないといった指導もよく耳にする. 近年になりMoist wound healingといった概念が専門分野の垣根を越えて提起されており, 若干の文献的考察と創処置に対する当科の試みを紹介する. 方法:当科受診の外傷, 慢性皮膚潰瘍の患者に対してはまず生理食塩水または水道水にて創部の洗浄を行い, デブリードマン, 縫合などその損傷状況に適した処置を行った後, ほとんどの例で創傷被覆材によるドレッシングを行っている. 外来患者に対しては被覆材を余分に提供し使用方法の説明を行い, 消毒のかわりに入浴などによる積極的な創洗浄を勧めている. 結果, 考察:従来の消毒, 軟膏塗布, ガーゼ貼付といった治療法と比べ患者の疼痛は軽減し処置法も簡便化され, QOL上の制限も激減した. また, 過去2年間処置が原因と思われる感染は1例も認められなかった. しかし, 創傷被覆材の使用は保険上最大3週間しか認められておらず, 特に長期治療となりやすい慢性皮膚潰瘍に対しては使用上注意が必要となることをしばしば経験した. また, 高齢者などでは消毒を希望する者も多く, 患者への啓蒙活動も適宜必要と思われた.
ISSN:1345-4676