(I-P1-1)視覚・聴覚刺激を用いた嚥下運動誘発に関する研究

【目的】摂食・嚥下障害をもつ認知症患者は, 随意的嚥下訓練時の指示に従うことが難しいため, 摂食・嚥下機能の回復が困難とされてきた. そこで近年の脳科学研究で明らかとなってきている感覚運動制御システムを利用することを考えた. これは無侵襲に運動に関連した視覚, 聴覚情報を提示しその運動の誘発を促すもので, 認知症高齢者や重度の要介護者に対して容易に選択しうる治療法となりうる. そこで, 健常者に対し嚥下運動に関連した視覚・聴覚刺激を行なった時の脳活動を検索することとした. 【方法】対象は健常ボランティア12名(男性6名, 女性6名, 平均年齢23歳)とした. 嚥下運動に関連した視覚のみの刺激聴...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 10; no. 3; p. 341
Main Authors 渡邊裕, 河合毅師, 花上伸明, 山根源之, 阿部伸一, 山田好秋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 31.12.2006
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ISSN1343-8441

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Summary:【目的】摂食・嚥下障害をもつ認知症患者は, 随意的嚥下訓練時の指示に従うことが難しいため, 摂食・嚥下機能の回復が困難とされてきた. そこで近年の脳科学研究で明らかとなってきている感覚運動制御システムを利用することを考えた. これは無侵襲に運動に関連した視覚, 聴覚情報を提示しその運動の誘発を促すもので, 認知症高齢者や重度の要介護者に対して容易に選択しうる治療法となりうる. そこで, 健常者に対し嚥下運動に関連した視覚・聴覚刺激を行なった時の脳活動を検索することとした. 【方法】対象は健常ボランティア12名(男性6名, 女性6名, 平均年齢23歳)とした. 嚥下運動に関連した視覚のみの刺激聴覚のみの刺激, および視覚聴覚双方の刺激とそれぞれのコントロール刺激を組み合わせた計8種類の刺激をそれぞれ非侵襲的に提示した. この時の被験者の脳賦活領域をfMRI(島津Marconi製MAGNEX ECLIPSE1.5T PD250)を用いて計測し, 解析を行なった. 【成績および考察】(1)嚥下音の提示では補足運動野に有意な脳の賦活が認められた. (2)嚥下の動画の提示では, 一次運動野, 運動前野, 前頭連合野に有意な脳の賦活が認められた. (3)嚥下の動画と嚥下音の同時提示では一次運動野, 運動前野, 前頭連合野, 補足運動野に有意な脳の賦活が認められた. 嚥下音のみの提示でも運動に関連した脳の賦活が認められ, 嚥下の動画のみの提示, その複合刺激とさらにその賦活は強くなり領域も広がった. これにより, 嚥下運動に関連した視覚, 聴覚刺激により, 嚥下運動の誘発を促す可能性が示唆された.
ISSN:1343-8441