遠位弓部大動脈遮断困難症例において逆行性脳灌流法に高本法を用いた1例

「要旨」 遠位弓部から下行大動脈に対しての手術では左開胸法, 補助手段には低体温循環停止法や逆行性脳灌流法(上田法, 高本法)が用いられる. 今回, 遠位弓部大動脈遮断困難症例に左前側方開胸・胸骨下部部分切開法(antero-lateral thoracoto-my with partial sternotomy : ALPS)と低体温循環停止法および下肢送血を用いて右房に戻る血液を利用する高本法による間接的逆行性脳灌流にて体外循環を施行した. 膀胱温20℃に冷却後, トレンデレンブルグ体位として上行大動脈および腹腔動脈直上で下行大動脈を遮断し上半身循環停止とした. 大腿動脈から送血を開始し,...

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Published in体外循環技術 Vol. 49; no. 4; pp. 374 - 379
Main Authors 吉野将, 松本和希, 中尾司, 宮本聡史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本体外循環技術医学会 01.12.2022
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ISSN0912-2664

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Summary:「要旨」 遠位弓部から下行大動脈に対しての手術では左開胸法, 補助手段には低体温循環停止法や逆行性脳灌流法(上田法, 高本法)が用いられる. 今回, 遠位弓部大動脈遮断困難症例に左前側方開胸・胸骨下部部分切開法(antero-lateral thoracoto-my with partial sternotomy : ALPS)と低体温循環停止法および下肢送血を用いて右房に戻る血液を利用する高本法による間接的逆行性脳灌流にて体外循環を施行した. 膀胱温20℃に冷却後, トレンデレンブルグ体位として上行大動脈および腹腔動脈直上で下行大動脈を遮断し上半身循環停止とした. 大腿動脈から送血を開始し, 腹部臓器を灌流した後に右房に戻る酸素飽和度が高い血液の脱血量を調節することで間接的逆行性脳灌流を確立した. 循環停止中の局所脳酸素飽和度(rSO2)は循環再開直前まで低下したが, 最低値(L:48%, R:51%)は危険閾値までの低下なく術後の脳合併症も認めなかった. 間接的逆行性脳灌流は時間的制約や灌流域の不確定さもあるが, 補助手段の一つとして施行することができる.
ISSN:0912-2664