時間外輸血の現状と今後の対応について

本院における時間外輸血業務は, 事務局宿日直者の協力のもとで輸血部検査室を開放し当該診療科医師が赤血球や血漿などの輸血検査をするという形態で行っている. そこで過去3年間に当院で時間外に実施された輸血の実態を調査することで, 輸血の安全性を維持しながら, 診療科医師の負担を軽減させる手段を検討したので報告する. 検討方法:平成4年4月より平成6年10月までの約3年間に実施された時間外輸血1,437件について診療科別, 時間帯区分, 輸血目的, 血液製剤種別, 輸血単位数などを年度別に比較調査した. 現行の輸血業務:日常輸血業務においては, 血液型と抗赤血球抗体検査を常時受付けている. 検査依頼...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 41; no. 1; pp. 102 - 103
Main Authors 秋林建, 本田康恵, 岩切和子, 近藤誠司, 大瀧幸哉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.03.1995
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ISSN0546-1448

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Summary:本院における時間外輸血業務は, 事務局宿日直者の協力のもとで輸血部検査室を開放し当該診療科医師が赤血球や血漿などの輸血検査をするという形態で行っている. そこで過去3年間に当院で時間外に実施された輸血の実態を調査することで, 輸血の安全性を維持しながら, 診療科医師の負担を軽減させる手段を検討したので報告する. 検討方法:平成4年4月より平成6年10月までの約3年間に実施された時間外輸血1,437件について診療科別, 時間帯区分, 輸血目的, 血液製剤種別, 輸血単位数などを年度別に比較調査した. 現行の輸血業務:日常輸血業務においては, 血液型と抗赤血球抗体検査を常時受付けている. 検査依頼に際し, 予め主治医がABO型を簡易判定してから血型, 抗体検査の実施と, 輸血時には再度これらを行うことでダブル・トリプルチェックを行い輸血事故の防止と適合血の早期確保に対処している. 頻回輸血患者においては, 4日目毎に抗体検査を再実施している. 時間外輸血では, 診療科医師が輸血部で赤血球製剤や血漿製剤を, 血小板製剤は, 事務宿日直者を通じて日赤血液センターにFAX発注し入手してから交差適合試験を実施している. 交差方法は, 赤血球製剤は間接クームス法を, 血漿・血小板製剤はIS法を実施している. 結果:3カ年における時間外輸血件数は, 平成4年度が528件, 平成5年度が500件, 平成6年度(4月~10月)が409件であった. これらは, 各年度における輸血総数の13%, 14%, 16%の割合であり年度間に大差はなかった. 目的別では, 手術用輸血が平成4年度に99件(19%), 平成5年度は82件(16%), 平成6年度は77件(19%)であり, 緊急手術と術中追加分が約半数であった. 残りの約80%は病棟輸血であり, このうち4%が手術当日の後出血による病棟輸血が占めていた. 時間帯区分における準夜帯(17時~22時), 深夜帯(22時~8時), 休日帯(土日/祭日の8時~17時)の割合は, 準夜帯が41, 38, 34%と漸次減少し, 逆に休日帯が44, 47, 50%と増加傾向にあった. 一方深夜帯は平均15%で年度間に差はみられなかった. 休日帯では, 他の製剤に比べ血小板製剤が比較的多くの診療科で使用されていた. これに対し準夜帯や深夜帯では手術や術後出血による赤血球製剤や血漿輸血の使用が著明であった. なおこれらの調査期間で時間外輸血における輸血上の問題点は特に認めなかった. 考察:本院における時間外状況を約3カ年調査した結果, 今後の改善策を検討すると, 約4%が時間外に入院となった救急患者や未熟児等であり, 何れも血液型や抗赤血球抗体が未検査患者で輸血をする上で慎重に行う必要があることが明らかであった. 一方約96%は入院患者でこの中には新患者も含まれているが, 予め時間内に血液型や抗赤血球抗体検査を済ませた患者群であり, 輸血検査を簡略できる群であることが分かった. そこでこれらの交差適合試験においては, 未検査患者は, 血液型を正確に判定することが必要となり, さらに赤血球製剤は間接クームス法を, 血漿・血小板製剤は, IS法の実施が必要である. 一方検査済患者群においては, 赤血球製剤はIS法だけ実施し, 血漿・血小板製剤においてはNon-crossでも可能と判断された. なお後者の検査群の簡略化については, 既に日常業務でも実施しており, 赤血球製剤はnon-crossで診療科に払い出しているが, さらに間接クームス法までを継続検査する作業を約2年間程追跡確認として実施しているが, 何れも異常やトラブルも発生していないので時間外でも実施可能と判断された. 以上のことにより, 3カ年の輸血実績を試算してみると, 赤血球製剤が約90%, 血漿製剤が92%, 血小板製剤が99%の時間外検査を簡略化することが可能と思われた.
ISSN:0546-1448