フィブロネクチン腎症 (FN) におけるFN1遺伝子変異の同定およびその機能解析に関する研究

【緒言】 フィブロネクチン(FN)腎症は, 1995年に優性遺伝性腎疾患として初めて報告された. 腎糸球体内へのFNの多量の沈着を特徴とし, 発症後約15~20年で末期腎不全に至るばかりか, 高率に移植後再発をきたす予後不良な疾患である. 2007年に責任遺伝子(FN1)が同定されたが, 病因・病態はいまだ解明されていない. 以降, FN1遺伝子解析は世界的に見ても行われておらず病因・病態につながる報告もない. 【目的】 国内のFN1遺伝子解析を行い, 同定し得た変異遺伝子の機能解析を行い, 疾患発症機序を解明する. 【方法】 病理学的にFN腎症と診断されている11家系(男性3 女性8)の患者...

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Published in日本小児腎臓病学会雑誌 Vol. 27; no. 2; p. 145
Main Authors 大坪裕美, 岡田太郎, 梶本武利, 野津寛大, 神吉直宙, 松野下夏樹, 忍頂寺毅史, 貝藤裕史, 中村俊一, 飯島一誠
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本小児腎臓病学会 15.11.2014
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ISSN0915-2245

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Summary:【緒言】 フィブロネクチン(FN)腎症は, 1995年に優性遺伝性腎疾患として初めて報告された. 腎糸球体内へのFNの多量の沈着を特徴とし, 発症後約15~20年で末期腎不全に至るばかりか, 高率に移植後再発をきたす予後不良な疾患である. 2007年に責任遺伝子(FN1)が同定されたが, 病因・病態はいまだ解明されていない. 以降, FN1遺伝子解析は世界的に見ても行われておらず病因・病態につながる報告もない. 【目的】 国内のFN1遺伝子解析を行い, 同定し得た変異遺伝子の機能解析を行い, 疾患発症機序を解明する. 【方法】 病理学的にFN腎症と診断されている11家系(男性3 女性8)の患者およびその家族22名のFN1遺伝子解析を行った. 次に変異蛋白を精製し, ELISAや細胞免疫染色法を用い, ヘパリン結合能・細胞接着能を検討した. 【結果】 全患者にFN1遺伝子変異を同定し得た. 5名は過去に報告のあるp.Y973C変異を認め, それはヘパリン結合部位に存在した. 他6名に各々新規の変異を認めた. (p.W1925X, p.1472del, p.L1974P). 新規の変異のうち, p.1472delはこれまで報告のないインテグリン結合を制御する部位に存在した. 家系内で変異を有した6名中4名は患者と同一の遺伝子変異を認めたにも関わらず無症状であった. 機能解析を行った結果, Wild Typeと比較して, ヘパリン結合部位に変異を有する蛋白のヘパリン結合能は減弱を認め, またインテグリン結合制御部位の変異を含めた変異蛋白で細胞膜への接着能の低下を認めた. 【結語】 全患者でFN1遺伝子変異を同定し, うち一つは初めてインテグリン結合部位に同定した. ヘパリン・インテグリン結合部位はFN会合において大きな役割を果たしており, FNが細胞外マトリックスの構成要素として有効に利用されず, 不溶性物質として沈着することが本症の病因であると示唆された.
ISSN:0915-2245