(II-P2-1)長期療養型病棟における摂食・嚥下能力の低下に対応した嚥下障害食の効果と課題

【目的】慢性期リハビリテーション患者が中心の長期療養型病棟では, 入院中に摂食・嚥下能力が低下することによって発症する誤嚥及び誤嚥性肺炎が問題となっている. 今回, 長期療養型病棟における摂食・嚥下能力の低下に対応した嚥下障害食の提供が臨床成績等に及ぼす影響を検討した. 【方法】独立行政法人国立病院機構釜石病院リハビリテーション科に入院していた慢性期リハビリテーション患者15名(男性8名, 女性7名, 平均年齢74.7±14.5歳)を対象として, 嚥下障害食開始時と6ヶ月後の血液生化学検査, 身体状況, 栄養素等摂取状況及び誤嚥性肺炎の発生状況を比較した. なお, 当院の嚥下障害食は5段階に分...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 10; no. 3; p. 448
Main Authors 小原仁, 松原弘樹, 土肥守
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 31.12.2006
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ISSN1343-8441

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Summary:【目的】慢性期リハビリテーション患者が中心の長期療養型病棟では, 入院中に摂食・嚥下能力が低下することによって発症する誤嚥及び誤嚥性肺炎が問題となっている. 今回, 長期療養型病棟における摂食・嚥下能力の低下に対応した嚥下障害食の提供が臨床成績等に及ぼす影響を検討した. 【方法】独立行政法人国立病院機構釜石病院リハビリテーション科に入院していた慢性期リハビリテーション患者15名(男性8名, 女性7名, 平均年齢74.7±14.5歳)を対象として, 嚥下障害食開始時と6ヶ月後の血液生化学検査, 身体状況, 栄養素等摂取状況及び誤嚥性肺炎の発生状況を比較した. なお, 当院の嚥下障害食は5段階に分類した. 嚥下障害食1は, 最も誤嚥や咽頭残留のリスクが高い患者の食事であり, 全ての料理はゼリー状で, 水分補給についてもゼリー状とした. 嚥下障害食2~4では, 主食は全粥, おかず等についてはゼリー状又はペースト状の料理を提供し, 摂食・嚥下能力の低下に合わせてゼリー状の料理の割合を高くした. 嚥下障害食5は, 最も軽症な患者の食事であり, 主食は全粥, おかず等については固形(歯ぐきで押しつぶせる硬さ)とした. 【結果】Alb及びTCについては, 6ヶ月後は開始時と比較して有意に増加した. BMIは, 6ヶ月後は開始時と比較して増加傾向を示した. エネルギー充足率は, 6ヶ月後は開始時と比較して有意に増加した. CRPは, 6ヶ月後は開始時と比較して有意に減少した. 誤嚥性肺炎の発生日数については, 6ヶ月後は開始時と比較して減少傾向を示した. 【考察】嚥下障害食の提供によって, 栄養状態の改善及び誤嚥性肺炎の抑制効果が認められたことから, 嚥下障害食の有効性が示唆された. 一方で, 口を閉じて咀嚼できない場合や通常の食事量を摂取できない場合には, 個別対応が必要であると考えられた.
ISSN:1343-8441