外来リハビリテーションによって歩行の改善が見られた重度失語症を伴う慢性期右片麻痺患者 - 認知的共感システムに着目して
「要旨」【はじめに】今回, 重度の失語症を伴う慢性期右片麻痺症例に対して視覚的な分析により課題の意図の理解を促した上でリハビリテーションを行った. その結果, 歩行の改善が得られたため報告する. 【症例紹介】症例は約半年前に中大脳動脈領域の脳梗塞を呈し右片麻痺となった40歳台の女性である. 発症から約半年後に外来リハビリ(3/W)を開始した. 右下肢のBr-stageはIIレベルであった. 右下肢には伸張反射の亢進や放散反応などの特異的病理が見られ, 屋内外歩行は自立していたが, 速度が遅く(10m歩行: 快歩30.19秒31歩), 下肢のぶん回しや反張膝が見られた. また失語と失行があり,...
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| Published in | 四国医療専門学校紀要 no. 4; pp. 9 - 15 |
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| Main Author | |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
四国医療専門学校
31.03.2023
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| ISSN | 2435-4562 |
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| Summary: | 「要旨」【はじめに】今回, 重度の失語症を伴う慢性期右片麻痺症例に対して視覚的な分析により課題の意図の理解を促した上でリハビリテーションを行った. その結果, 歩行の改善が得られたため報告する. 【症例紹介】症例は約半年前に中大脳動脈領域の脳梗塞を呈し右片麻痺となった40歳台の女性である. 発症から約半年後に外来リハビリ(3/W)を開始した. 右下肢のBr-stageはIIレベルであった. 右下肢には伸張反射の亢進や放散反応などの特異的病理が見られ, 屋内外歩行は自立していたが, 速度が遅く(10m歩行: 快歩30.19秒31歩), 下肢のぶん回しや反張膝が見られた. また失語と失行があり, 特に単語理解は良好であるが短文では成績が低く, 表出は残語のみで課題中に混乱することが多かった. 一方, 実演やジェスチャーを用いると課題の理解や運動の予測制御が行いやすい状態であった. 【治療戦略】文法・文章理解はBroca野を含んだ左下前頭回, 音韻は左聴覚野, 語彙・意味理解は左下頭頂小葉とWernicke野が処理をしている(Sakai, 2005). 症例は下頭頂小葉が残存しているため単語レベルでは理解が可能であると考えた. また他者行為の観察から相手の意図を読み取るミラーネットワークは下前頭回, 下頭頂小葉, 上側頭溝が働く(Iacoboniら, 2006). よって視覚情報から相手の意図を認識できると考え, 課題時には単語での説明と共に鏡やセラピストの実演などで視覚的な分析を重点的に実施した. 課題は体幹の運動や足底圧の認識課題とそれに基づいた歩行練習を行った. 【結果と考察】徐々にセラピストの意図を理解し治療が円滑に行えた. 3か月後には10m歩行が18.22秒24歩となり, 装具を変更することができた. 言語的な理解が難しい状況で視覚的な分析を通して課題の意図を理解できたことが行為の改善に寄与したと考えられた. |
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| ISSN: | 2435-4562 |