当施設における腹部内臓動脈瘤 (外傷性瘤・腎動脈瘤を除く) に対する治療戦略と成績

「要旨」:【目的】腹部内臓動脈瘤は比較的稀な疾患であるが, 破裂した場合致死的となるため, 安全かつ的確な治療法の選択が望まれる. 当該病変の治療成績を報告する. 【方法】1995年10月から2011年9月までに当施設で治療された37例39瘤を対象とした. 腎動脈瘤, 外傷性の仮性動脈瘤は対象外とした. 男性25例, 女性12例で, 平均年齢は59.4歳であった. 【結果】瘤の占拠部位は脾動脈20瘤, 上腸間膜動脈4瘤, 膵十二指腸動脈4瘤, 肝動脈3瘤, 腹腔動脈3瘤, 胃十二指腸動脈3瘤, 腹腔・上腸間膜動脈共通幹奇形が2瘤であり, 瘤径は平均29.3±15.2mmであった. 31例が無症...

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Published in日本血管外科学会雑誌 Vol. 22; no. 6; pp. 876 - 880
Main Authors 藤井琢, 尾原秀明, 田中克典, 関本康人, 大田原正幸, 北川雄光
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本血管外科学会 25.10.2013
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ISSN0918-6778

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Summary:「要旨」:【目的】腹部内臓動脈瘤は比較的稀な疾患であるが, 破裂した場合致死的となるため, 安全かつ的確な治療法の選択が望まれる. 当該病変の治療成績を報告する. 【方法】1995年10月から2011年9月までに当施設で治療された37例39瘤を対象とした. 腎動脈瘤, 外傷性の仮性動脈瘤は対象外とした. 男性25例, 女性12例で, 平均年齢は59.4歳であった. 【結果】瘤の占拠部位は脾動脈20瘤, 上腸間膜動脈4瘤, 膵十二指腸動脈4瘤, 肝動脈3瘤, 腹腔動脈3瘤, 胃十二指腸動脈3瘤, 腹腔・上腸間膜動脈共通幹奇形が2瘤であり, 瘤径は平均29.3±15.2mmであった. 31例が無症候性で, 破裂例は1例であった. 治療法の内訳は, 血管内治療20例 (コイル塞栓術19例, covered stent留置術1例), 外科的手術が16例 (脾摘術4例, 瘤切除術2例, 瘤縫縮術1例, 瘤切除術 + 血行再建術9例), ハイブリッド手術1例 (コイル塞栓術 + 血行再建術) であった. 周術期に重篤な合併症や死亡例はなかった. 経過観察期間中に瘤の再発や拡大などは認めていない. 動脈瘤の成因としては粥状動脈硬化症以外にfibromuscular dysplasiaが1例, segmental arterial mediolysisが3例であった. 【考察】今回良好な治療成績を得たことから, 腹部内臓動脈瘤に対して, 低侵襲な血管内治療を第一選択とし, 再建の必要性に応じて開腹手術を考慮することは妥当であると考えられた. デバイスの進歩にともない, さらなる血管内治療の適応拡大が期待されるが, 臓器血流温存を考慮した適切な治療方針の決定が必須である.
ISSN:0918-6778