腸回転異常を合併した腎動脈下腹部大動脈瘤の1例

要旨: 腸回転異常は腸管の回転や後腹膜への固定が先天的に障害された状態であり, 多くは小児期に発症し成人期の報告は少ない. 腸回転異常を合併した腹部大動脈瘤に対する人工血管置換術の報告もほとんどなく, 手術戦略などはあまり知られていない. 今回, 開腹・経腹膜経路での人工血管置換術を行った症例を経験した. 症例は69歳, 男性. 胃癌手術時に腸回転異常と診断されていた. 造影CT検査では腎動脈下に腹部大動脈瘤を認めたが, 腸回転異常の評価は困難であった. 比較的若年であり人工血管置換術の適応であると判断した. 術中所見では, 小腸は右側腹部に, 結腸は左側腹部に存在していた. 腎動脈下で遮断し...

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Published in日本血管外科学会雑誌 Vol. 32; no. 2; pp. 147 - 150
Main Authors 保坂公雄, 田邉大明, 加藤雄治, 川井田大樹, 松田諭, 外山雅章
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本血管外科学会 2023
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ISSN0918-6778

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Summary:要旨: 腸回転異常は腸管の回転や後腹膜への固定が先天的に障害された状態であり, 多くは小児期に発症し成人期の報告は少ない. 腸回転異常を合併した腹部大動脈瘤に対する人工血管置換術の報告もほとんどなく, 手術戦略などはあまり知られていない. 今回, 開腹・経腹膜経路での人工血管置換術を行った症例を経験した. 症例は69歳, 男性. 胃癌手術時に腸回転異常と診断されていた. 造影CT検査では腎動脈下に腹部大動脈瘤を認めたが, 腸回転異常の評価は困難であった. 比較的若年であり人工血管置換術の適応であると判断した. 術中所見では, 小腸は右側腹部に, 結腸は左側腹部に存在していた. 腎動脈下で遮断し, 人工血管置換術を行った. 小腸を右側腹部に, 結腸を左側腹部に配置し, 術後の腸軸捻転を予防した. 腸回転異常を合併した腎動脈下腹部大動脈瘤手術では, 大動脈への到達方法が重要であり, 閉腹時の腸管の位置に注意する必要がある.
ISSN:0918-6778