遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)患者の管理・サーベイランスにおける問題点

遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)は頻度的にも高く, 多重癌や若年者癌発生などの点からも, 患者および家系全体を対象とした長期的なマネージメントが重要であるが, 実地臨床上では多くの問題点が存在する. 1, 適切なサーベイランスに組み入れるための最初の診断に関して, 一般病院におけるHNPCCの診断率は極めて低い. 2, 診断基準に関して, 本邦の臨床診断基準は基準自体が緩すぎHNPCCの拾い上げの点からは効率が悪く, またアムステルダム基準もHNPCC関連癌のスペクトラムやde nuvo発端者の見逃しの可能性などの問題点を有している. 3, 診断の一助としてのMicrosatellit...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in家族性腫瘍 Vol. 5; no. 2; pp. 77 - 81
Main Authors 冨田尚裕, 岡村修, 中田健, 大里浩樹, 田村茂行, 杉本圭司, 相原智彦, 三木宏文, 橘高信義, 金致完, 瀧内大輔, 岡田かおる, 高塚雄一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本家族性腫瘍学会 15.05.2005
Online AccessGet full text
ISSN1346-1052

Cover

More Information
Summary:遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)は頻度的にも高く, 多重癌や若年者癌発生などの点からも, 患者および家系全体を対象とした長期的なマネージメントが重要であるが, 実地臨床上では多くの問題点が存在する. 1, 適切なサーベイランスに組み入れるための最初の診断に関して, 一般病院におけるHNPCCの診断率は極めて低い. 2, 診断基準に関して, 本邦の臨床診断基準は基準自体が緩すぎHNPCCの拾い上げの点からは効率が悪く, またアムステルダム基準もHNPCC関連癌のスペクトラムやde nuvo発端者の見逃しの可能性などの問題点を有している. 3, 診断の一助としてのMicrosatellite instability(MSI)解析や確定診断, 保因者診断としての遺伝子診断(Genetic testing)があるがいずれも保険適応がなく, また臨床研究としてサポートする公的予算も極めて少ない. 4, サーベイランスのプロトコール自体未だ確立しておらず, サーベイランスの検査自体も保険適応がない. 5, 遺伝性疾患として必要となる遺伝診療や遺伝カウンセリングを提供できる医療施設や専門医療者が極めて少ない. 以上, HNPCC患者のマネージメントにおける問題点を我々の多施設共同研究や全国登録の結果などから考察する.
ISSN:1346-1052