小児のHCV感染経路の検索

目的;C型肝炎ウイルス(以下HCV)は, 成人領域では慢性肝疾患の原因として重要視されている. その感染経路については輸血後感染が多いことが判明しているが, 不明なものも多い. 今回我々は, HCV抗体陽性小児の感染経路を検討した. 方法;1990年4月から1992年1月までの間に産業医科大学病院に入院または外来受診し, 何らかの理由でHCV感染が疑われた小児を対象とした. なお, 血友病患児は除外した. 検査項目は, GOT, GPT, HCV抗体(第1世代および第2世代)で, 必要に応じて, HBウイルス, HAウイルス, サイトメガロウイルス等肝機能異常をおこしうるウイルス抗体の検索も行...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 39; no. 2; p. 432
Main Authors 宮川隆之, 梶原康巨, 白幡聡, 山岸稔, 田中真典, 野原正信, 平野聡子, 田中明美, 比嘉幸枝, 中田浩一, 坂本久浩, 藤原弘一, 白木洋, 前田義章
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.05.1993
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ISSN0546-1448

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Summary:目的;C型肝炎ウイルス(以下HCV)は, 成人領域では慢性肝疾患の原因として重要視されている. その感染経路については輸血後感染が多いことが判明しているが, 不明なものも多い. 今回我々は, HCV抗体陽性小児の感染経路を検討した. 方法;1990年4月から1992年1月までの間に産業医科大学病院に入院または外来受診し, 何らかの理由でHCV感染が疑われた小児を対象とした. なお, 血友病患児は除外した. 検査項目は, GOT, GPT, HCV抗体(第1世代および第2世代)で, 必要に応じて, HBウイルス, HAウイルス, サイトメガロウイルス等肝機能異常をおこしうるウイルス抗体の検索も行なった. 結果:対象は136例で, そのうちHCV抗体陽性例は18例(約13%)であった. 陽性例のうち, 輸血後感染と考えられるものが13例(約72%)で, 全例GOT, GPTが持続的に上昇していた. 一方, 輸血歴がなく, 家族歴など他の感染経路もはっきりせず, かつ, GOT, GPTが異常値を示したものが3例(約17%)見いだされた. また, 輸血歴はないものの, B型肝炎ウイルス垂直感染予防のため, HBIGやHBワクチンの投与を受けた33症例中, 2例(約6%)にHCV抗体が検出された. まとめ;HCV抗体陽性小児の感染経路について検討した. 1. 輸血後感染と考えられたものが約70%で最も多かった. 2. B型肝炎ウイルス母児垂直感染予防のためHBIG, HBワクチン投与を受けた33例中, 2例がHCV抗体陽性であった. 3. 輸血歴, 家族歴などがなく, 感染経路の不明なものが3例みられた. 4. 母児垂直感染は1例も認めなかった.
ISSN:0546-1448