食道癌における低侵襲手術の導入とERAS (Enhanced recovery after surgery) による周術期管理の有用性

高侵襲手術である食道癌手術での周術期合併症を軽減し, 安全かつ迅速に術後回復を促進するため, 低侵襲手術である胸腔鏡下食道切除術の導入とEnhanced recovery after surgery (ERAS)による周術期管理を開始した. 2016年12月より胸腔鏡下食道切除術を開始し, ERASプロトコルの変更を行った. 2016年12月~2019年8月にかけて, 食道癌に対し上縦隔リンパ節郭清を施行した胸腔鏡下食道切除術23例(VATS群)を対象とし, それ以前に施行した開胸手術55例(No VATS群)との周術期転帰の比較を行った. VATS群において, 縫合不全は有意に減少し, また...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in外科と代謝・栄養 Vol. 54; no. 3; pp. 147 - 153
Main Authors 小倉正治, 長谷川博俊, 松井淳一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本外科代謝栄養学会 15.08.2020
Online AccessGet full text
ISSN0389-5564

Cover

More Information
Summary:高侵襲手術である食道癌手術での周術期合併症を軽減し, 安全かつ迅速に術後回復を促進するため, 低侵襲手術である胸腔鏡下食道切除術の導入とEnhanced recovery after surgery (ERAS)による周術期管理を開始した. 2016年12月より胸腔鏡下食道切除術を開始し, ERASプロトコルの変更を行った. 2016年12月~2019年8月にかけて, 食道癌に対し上縦隔リンパ節郭清を施行した胸腔鏡下食道切除術23例(VATS群)を対象とし, それ以前に施行した開胸手術55例(No VATS群)との周術期転帰の比較を行った. VATS群において, 縫合不全は有意に減少し, また, 術後気管内挿管の期間, 集中治療室滞在日数, 経口摂取開始までの日数, 術後在院日数は, それぞれ有意に短縮された. 食道癌手術における胸腔鏡下食道切除とERASプロトコルの変更により, 患者の周術期アウトカムの改善が見込まれると推察された. 治療成績の安定化のため, 食道癌手術におけるクリニカルパスを導入したため, さらにその成果を期待したい.
ISSN:0389-5564